出版社内容情報
「この先生きのこるには」「大丈夫です」これら表現は、読み方次第で意味が違ってこないか。このような曖昧な言葉の特徴を知れば、余計な誤解もなくなるはず
内容説明
「この先生きのこるには」「冷房を上げてください」言葉には、読み方次第で意味が変わるものが多々あり、そのせいですれ違ったり、争ったりすることがある。曖昧さの特徴を知り、言葉の不思議に迫ろう。
目次
1 「シャーク関口ギターソロ教室」―表記の曖昧さ
2 「OKです」「結構です」―辞書に載っている曖昧さ
3 「冷房を上げてください」―普通名詞の曖昧さ
4 「私には双子の妹がいます」―修飾語と名詞の関係
5 「政府の女性を応援する政策」―構造的な曖昧さ
6 「二日、五日、八日の午後が空いています」―やっかいな並列
7 「二〇歳未満ではありませんか」―否定文・疑問文の曖昧さ
8 「自分はそれですね」―代名詞の曖昧さ
9 「なるはやでお願いします」―言外の意味と不明確性
10 曖昧さとうまく付き合うために
著者等紹介
川添愛[カワゾエアイ]
1973年生まれ。言語学者、作家。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
124
「言葉のすれ違い」の例がこれでもかと言うほど提示され、夫々に文法的な解説が加えられる。言葉を理解するという行為が、言語上の問題だけではなく、状況や相手の意図を感じる能力があって初めて実現するものであることを実感する。だからこそ、その複雑な処理を瞬時にこなす人間の凄さと、自然言語処理の進化の早さに脱帽する。ネット社会になり、言葉のすれ違いや曖昧さによって生じた誤解が大きな問題となるリスクが拡大する。私もレビュー投稿では、文字数の制約から、危険を承知で曖昧な表現を是認している。只管、読者の良識を信じながら…。2024/05/04
けんとまん1007
107
そうそう、その通りと何度も頷きながら、読み進めた。文章、とりわけ何かを伝える文章には、多少こだわりを持つようにしている。何度も読み返し、意味が通じるのかどうかを見直す。少しの表現の変化で、読みやすさが随分違うことがある。句読点や点を、どう使うかでも変わりうる。曖昧でも通じているようで、誤解が生じているのが、難しくわかりにくい。そこで、文章だけでなく、図式化したり絵を使ったりして補うようにしている。それにしても、言葉の世界は果てしなく深い。2024/04/16
どんぐり
97
文の構造として「日本語のことばのあいまいさ」を知る本でもある。10章に分けて書いている。秘密というほどのことはないけれど、気になる多くのことばが分析されている。「やばい」のことばにみる、すごく危険とすごく良いの意味。「私には双子の妹がいます」の私は双子のもう一人なのか。「勉強しない大学生」は特定の勉強しない大学生なのか、それとも一般に勉強しない大学生なのか。「20歳未満ではありませんか」を〈はいい・いいえ〉で答えさせるのに、一体どっちにしたらいいの問題。→2024/12/16
venturingbeyond
86
年末恒例の大阪出張の移動中に読了。言語表現の多義性を、多様な具体例を用いて平易に示し、複数の解釈が生じるメカニズムを言語学の知見を用いて、初学者にも分かりやすく説明するリーダブルな入門書。毎年、生徒の志望理由書や小論文の添削指導で、なかなかの悪文を読まされる身からすると、生徒自身にそれぞれの文章の癖を検証するための視座を身につけさせることは大きな課題なので、まずは早めに本書を読ませたいところ。三木那由他『会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション』、和泉悠『悪い言語哲学入門』との併読をお薦め。2023/12/26
ネギっ子gen
85
【言葉を多面的に見ることが必要。その際に役立つのが、曖昧さの要因についての知識です】言語学者が、言葉のすれ違いの事例をもとに言葉の複雑さや面白さを紹介する新書。<私たちが体験している現実世界は多様で複雑です。一日として同じ日はなく、一つとして同じものはなく、ものの考え方や感じ方も一人一人違います。私たちはそういった森羅万象を、限られた音や文字からなる「言葉」というシステムで表現しようとしているのですから、曖昧さは言葉について回る宿命と言っていいでしょう>。そして、逆に曖昧さがなかったら味気ない、とも――⇒2024/07/13
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