出版社内容情報
小田中直樹[オダナカ ナオキ]
著・文・その他
内容説明
歴史がつまらないという人は残念ながら多い。その理由を探るべく、歴史学の流れを振り返ろう。事実、記憶、視野の大小など、その考え方は変化している。これを知れば、歴史が面白くなるに違いない!
目次
はじめに―歴史って、面白いですか?
第1章 高等学校教科書を読んでみる
第2章 「歴史を学ぶ」とはどういうことか
第3章 歴史のかたちはひとつだけじゃない
第4章 歴史の危機とその可能性
第5章 世界がかわれば歴史もかわる
おわりに―歴史学の二一世紀へ
著者等紹介
小田中直樹[オダナカナオキ]
1963年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科単位取得退学、博士(経済学、東京大学)。東京大学社会科学研究所助手などを経て、東北大学大学院経済学研究科教授。専門はフランス社会経済史、歴史関連諸科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
70
学生時代にとまでは言わない、せめて今から三四十年前に本書が出版されていたら、自分の「歴史」についての見方はもう少しまともになっていたかも知れない。本書は、ヨーロッパを中心に発展してきた、ランケを祖とする近代歴史学の流れを概観する中で、史料批判を主とした実証主義について、あるいは歴史上の真実と事実、歴史学における「言語論的展開」等々について、分かり易く解説している。折しも今年度から「歴史総合」が高校の必修科目として登場してきた。著者が願うように、「歴史が面白い」と感じる高校生の出現に繋がることを願っている。2022/10/25
kei-zu
38
なぜ学校で学んだ歴史はおもしろく感じなかったのか。本書は、19世紀における歴史学の端緒から掘り起こす(意外と最近なのですね)。 一方で、歴史の捉え方には様々なアプローチが行われたという。私が最近読んだ「砂糖の歴史」(岩波ジュニア新書)が解説した世界システム論も紹介される。 記憶と記録の意味、社会科学はどのように「公認」とされるかなど興味深い指摘も少なくない。2022/09/29
さとうしん
27
要するにランケ以来の史学史を辿った本なのだが、「歴史はなぜつまらないのか」という問いを専門の研究者が突き詰めたという所に特徴があるかもしれない。ソシュールと「言語論的転回」については、中国先秦秦漢史の場合は、当該分野と古文字学とが密接に結びついていることである程度対応できているように思うがどうだろう?また、「言語論的転回」がジェンダー史学の誕生に影響していることや、冷戦終結による「記憶をめぐる構想」が90年代以降の従軍慰安婦問題の勃興を促したのではないかと気付かせるなど、入門書ながら学びが多い。 2022/09/09
coolflat
23
歴史教科書が面白くない理由は、歴史学の主流をなす実証主義(ランケ学派)にあり、3つの特徴であらわされる。第一は、「ナショナル・ヒストリー」。第二は、専門家である歴史学者が、知識を欠如している非専門家である生徒や学生(及び部分的には小中高教員)に対して過去の事実を一方的に教え込むという「欠如モデル」を採用している事。第三は、個人的あるいは集合的な記憶を主観的で信用し難いとして排除し、歴史学者が見出し検証してきたがゆえに性格をもっていると判断された過去の事実に基づいて歴史を描き出す事。すなわち「記憶の排除」。2023/04/04
しょうじ@創作「熾火」執筆中。
20
主流派たるランケ派歴史学の特質とその限界(主として、「歴史学者コミュニティ」内に向けての発信のため、おもしろみに欠けるということ)を指摘し、その上で、第二次大戦後の新しい潮流を一瞥しています。コンパクトながら、要を得たまとめで、この一冊を起点として、さらに個々人で読み進めることで、理解が深まっていくと思いました。2024/01/30