出版社内容情報
物語を書く過程で、言葉に残らなかった、ああでもないこうでもない、ああでもあればこうでもあるし。こうした「ああ」と「こう」、つまり著者の書きながら考えたことを、おなじみの小説の舞台「月舟町」で、登場人物たちと著者自身が語り合う、味わい深い小説論。
内容説明
小説家の「ぼく」は、自分の描いた物語の中にある町「月舟町」におもむき、おなじみの登場人物たちと語り合う。主題は「物語とはなんだろう」。対話で深まる、ひと味違う物語論。
目次
1 皿の上には何がある?(りんご箱;登場人物;いろいろな「私」;デタラメと即興;よく分からないもの)
2 遠くに見えている灯り(切実な犠牲者;オーサー;ハッピーエンド)
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京都生まれ。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作と装幀の仕事をつづけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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KAZOO
128
吉田さんのプリマー新書3作目で、月舟町に戻ってきて様々な人との対話ということで物語についてのある意味難しく言えば哲学的な考えを述べられている気がしました。言葉は難しいことはないのですがよく読むと考えさせてくれます。今回は、かなりのイラストがあって目の保養にもなった気がします。2024/08/22
buchipanda3
109
吉田篤弘さんによる「物語」というものについての考察。と言っても堅苦しいものではなく、伝わりやすい言葉で吉田さんが物語を書く時に大切にしていることが優しく綴られていたと感じた。しかも物語(月舟町シリーズ)の登場人物たちと一緒に発見していくという、ユーモアのある不思議な読み心地の小説を読んでいるような楽しさもあった。作者と仲間たちはお題を丁寧に解きほどいていく。中でも親方の考え過ぎない素直な考え方に何度もハッとなった。そうか、自分が物語に何を求めて、何に心が動かされていたのか少し分かったような気がするなあ。2022/04/21
nico🐬波待ち中
90
物語の中の町「月舟町」に作者である吉田さんがおもむき、登場人物たちと”物語”について語り合う、というなんとも吉田さんらしい不思議なシチュエーションの物語。懐かしい「月舟町」のみんなの話を聴いてると、今まで読んだ「月舟町」シリーズの4冊が蘇って来るようだ。体は現実世界に、心は「月舟町」へ。読み手の私も静まり返った真夜中の「月舟町」の世界へと誘われる、そんな穏やかなひとときに夢心地。そして嬉しい話も最後に聴けて大満足。デ・ニーロの親方の言う「遠くの方に小さく見えている灯り」が読み手の私にも貰えた。2022/04/21
けんとまん1007
76
ものがたりのあるところ・・・って、どこだろう?最後は、自分自身の中なんだろうなあ~と思う。そんな物語の中の人物と、書き手との対話を通して、物語が紡がれていく。そんなことを考えさせられる、まさに、吉田ワールド全開。2022/05/26
mint-s
66
今宵も誰かと誰かが月舟町の片隅で話し始めるーーー。今回は著者の吉田篤弘さんが月舟町に出かけて行って、デ・ニーロの親方など登場人物たちと話すというシリーズのファンとしてはわくわくする設定。ああでもないこうでもないと月舟町の人たちと話しながら物語が生まれてきたんだなぁ。読んでいると私もつむじ風食堂の隅に座ってみんなの会話を聞いているみたいで楽しくなってくる。 2022/05/04