出版社内容情報
他者を理解しつながろうとする中で、生じる摩擦熱のようなものが「差別」の正体だ。「いけない」で断じて終えるのでなく、その内実をつぶさに見つめてみよう。
内容説明
誰かを気にいらないと感じるのはなぜ?他者を理解しよう、つながろうとするときに生じる摩擦熱の正体。
目次
第1章 差別とはどんな行為か
第2章 差別を考える二つの基本
第3章 カテゴリー化という問題―他者理解の「歪み」を考える
第4章 人間に序列はつけられるのだろうか
第5章 ジェンダーと多様な性
第6章 障害から日常を見直す
第7章 異なる人種・民族という存在
第8章 外見がもつ“危うさ”
第9章 差別を考えることの“魅力”
著者等紹介
好井裕明[ヨシイヒロアキ]
1956年大阪市生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。日本大学文理学部社会学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
future4227
49
多様性を認め合い、評価する社会を実現しているのはアラレちゃんのペンギン村やセサミ・ストリートなのだそうだ。まず私たちは誰でも差別をしてしまう可能性があるという自覚が必要だ。差別はいけないと封じ込めても差別意識そのものはなくならない。むしろ、どうして差別をしてしまうのか、その原因に向き合っていくことで、意識そのものを変えていけるのではないか。そして「普通」という感覚に常に疑問を感じることが大切。差別は「決めつけ」や「思い込み」の中から生じるからだ。今までの当たり前は、もはやもう当たり前ではないのだ。2021/12/04
フム
34
著者の本は『差別言論』『差別の現在』『「あたりまえ」を疑う社会学』に続いて4冊目。差別はその時々でいろいろな形で社会に姿を現して、私たちに考えることを促す。差別は特別なものではなくて、「決めつけ」や「思い込み」などから生まれるもので、誰もが差別したりされたりする可能性を持っていると考えた方がいい。差別を考える事例は身の回りにあふれているのだ。例えば第八章では「ぽっちゃり系女子」という言葉を取り上げている。太っていることをあざ笑うような価値観はメディアにあふれているが、そもそも前提となる「普通」とは何か。2021/05/20
K1
18
「普通」って、なんだろうーまずはそこから。その人は何を、どんなふうに感じているのかを想像する力が大切ってことかな。2021/04/27
venturingbeyond
17
自他の相互理解の観点から、差別の本質と差別的な関係性の結び直しの処方箋を考える「差別の社会学」入門。最初に、差別の原理として、「カテゴリー化」に基づく他者理解の不可避性とその暴力性・差別性が明解に語られる。4章以降は各論で、「部落差別」、「ジェンダー」、「障害」、「人種・民族差別」「ルッキズム」が扱われる。入門書という位置づけからか、各論は、問題の所在を明らかにする程度に留まっていて少々物足りないが、総論の差別との向き合い方を論じた部分が入門書としての肝で、この部分が重要。入門書としてまずまずの一冊です。2021/01/06
テツ
16
「社会的に許されなくなった」差別を目にして眉を顰めるのではなく、自分だって無意識に無自覚にそれを平気で行ってきたのだろうし、おそらく現在進行形で行っているんだろうなと、まずは強く深く自覚し自戒すること。自らの中で長年かけて育んできた基準は絶対ではない。社会というぼんやりとした存在が提示する基準も勿論絶対ではない。他者が例えそれらから逸脱していたとしても、それだけを理由に排除するなど決して許されないのだ。社会の中で生きる基本は自らの中に確固とした芯を築き上げ、同時にそれを他者には押しつけないこと。2023/01/20