内容説明
体重の二倍もの重さを支えることができる糸を出すミノムシ、柔らかくて強い糸を出すクモ…。身近に存在していてもずっと見過ごされてきた小さな虫たち。虫たちの作り出す優れた天然繊維に今注目が集まっている。
目次
第1章 人はクモの糸にぶら下がれるのか?(クモの糸の不思議;クモから糸を取る;クモの糸の性質;クモの糸に学ぶ;クモの糸は強い!)
第2章 やっぱりカイコはすごい(絹糸を知る;絹糸の性質と構造を探る)
第3章 ミノムシはなぜ落ちないの?(ミノムシの不思議;ミノムシの糸の性質;ミノムシの糸の驚くべきしくみ)
第4章 幼虫たちも糸を出す(ダニとは何か?;幼虫が出す糸と繭;絹を作る昆虫たち)
第5章 虫たちの糸と最先端技術(クモの糸の実用とは;カイコの絹糸はこんなにも役立つ;なぜ注目される虫の糸;無名の虫から夢の繊維)
著者等紹介
大〓茂芳[オオサキシゲヨシ]
1946年兵庫県生まれ。大阪大学理学部高分子学科卒業。同大学院理学研究科博士課程修了。島根大学教授を経て、奈良県立医科大学医学部名誉教授。理学博士、農学博士。専門は、生体高分子学、高分子物理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鯖
21
クモの糸の研究の第一人者による糸を出す虫についての本。絹糸はクモの糸よりもタンパク質の化学的結合が切れやすいので紫外線で劣化しやすい。生まれた直後からケツのほうに蓑をつくり、身体にぴったり合うように増築していくミノムシ。野蚕のヤママユを山まで取りにいくのは面倒だから、養蚕の仕組みを創り出した。クモの糸は枝にからめて、魚とりの網には使用した例がある。ただクモは共食いするので、これまで家畜にされてこなかった。確かに家畜って草食の生き物ばっかりだもんなあ。人工血管等の医療材として研究が目下進んでいるとのこと。2019/10/20
マカロニ マカロン
7
個人の感想です:B。今年読んだ最後の本、304冊目。糸を出す虫と言えば蜘蛛と蚕が代表的だが、蓑虫やダニもいた。確かに子どもの頃、蜘蛛と蓑虫は観察した記憶がある。蚕は身近にはいなかったが、桑畑はあちこちにあった。桑の葉にはタンパク質が豊富に含まれているそうで、それを食べて蚕はタンパク質の絹糸を作り出すそうだ。蜘蛛の巣のうち横糸のみが粘着質があり、蜘蛛は獲物が引っかかった時、横糸を避けて素早く移動する。命綱というべき牽引糸は2本の糸(フィラメント)でできて、一本切れても安全性を確保している。2019/12/31
Tomomi Yazaki
6
糸を出す。虫ではないが、その第一人者は何と言ってもクモ。何故か可愛いと思ってしまう生き物。この本ではクモの糸はブチブチ切られるので採取が難しいとか。あれ?子供の頃、クモの尻から糸をクルクルと指に巻き付け、絶対切れない指輪を作って遊んでたけど?それからカイコ。田舎で養蚕していたからなじみ深い。カイコが桑の葉をサワサワ食べる音が耳に残っている。最後にみのむし。これも親しんできた虫。みのから虫を出し、糸くずと千切った色紙でみのを作らせた。太古から何億年も試行錯誤して作られた生物の糸。そう簡単には解明されまい。2019/07/26
りさかめ
3
クモなど糸を出す虫に焦点を当て、その糸の性質を研究してわかってきたこと、将来の展望などが書かれていて非常に面白かった。クモの糸に「柔らかくて強い」という素晴らしい性質があること、命綱として出す糸は1本のように見えて、実は2本のフィラメント(その1本ずつが自分の体重を支えられる)から成っているなど、知らないことばかりであった。「"2"の安全則」はクモだけでなく他の虫でも見られる点に驚いた。本書の内容には満足だが、構成のせいかくどいように感じる部分や、主語と述語が微妙に対応していない文が見られたのは少し残念。2019/06/22
takao
2
ふむ2022/11/16