出版社内容情報
キリスト者として、歌人として、生と死に向き合った死刑囚・1968年の横須賀線爆破事件の犯人純多摩良樹の葛藤や苦悩を描く。キリスト者として、歌人として、生と死に向き合った死刑囚・1968年の横須賀線爆破事件の犯人純多摩良樹の後半生の壮絶な生き様を豊富な資料を元に描く。
加賀 乙彦[カガ オトヒコ]
著・文・その他
内容説明
罪を見つめ、罰を引き受けるとはどういうことか。死を受け入れ、乗り越えて生きることは可能か。1968年の横須賀線爆破事件の犯人で死刑囚の短くも懸命に生きたその姿を描き出す。
目次
1 横須賀線爆破事件
2 罪と罰
3 刑場と獄窓
4 文鳥
5 歌人という希望
6 洗礼
7 神よ憐れみたまえ
8 惑乱の日々
9 天国と地獄
著者等紹介
加賀乙彦[カガオトヒコ]
1929年、東京生まれ。東京大学医学部卒業。東京拘置所医務技官を務めた後、精神医学および犯罪学研究のためフランス留学。帰国後、東京医科歯科大学助教授、上智大学教授を歴任。小説家・精神科医。日本芸術院会員、文化功労者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てん
24
どんな凶悪な事件を起こしても、そしてその結果死刑判決が下され、執行されても、執行される頃にはその事件が風化していることが多い。ここで書かれる死刑囚のことも、事件のことも知らなかった。高等教育を受けてはいないが、短歌にその才能を開花させた。死刑囚の純多摩良樹の日記、短歌、手紙からなる。死刑囚ではあるが執行宣告を受けたのち、執行前夜の最後の手紙には胸が詰まる。2019/04/23
テツ
18
1968年に起きた横須賀線電車爆破事件の犯人であり死刑執行された男の手記。死刑宣告を受け死を待つだけの身でありながら短歌の才能を開花させ、教誨師の訓戒に(それと自身の意思と悔恨)より執行されるまでの日々を懺悔の心を磨き上げ続けてきた様子は自業自得とはいえ胸に迫るものがある。この世には取り返しのつかない過ちがあるのだろうし、それを明確にあるとする社会の方が好みではあるのだけれど、もう少しだけ何かが違えば決定的に道を踏み外す前に晩年のような清らかで落ち着いた心境で市井に生きられたんだろうな。残念でならない。2020/05/01
gtn
15
横須賀線爆破事件の犯人で死刑囚の獄中手記。永山則夫の「無知の涙」を読み、マルクス主義に凝り固まった永山の浅薄さを軽蔑する。そして、永山にはキリスト教的「愛」が必要だと同情する。死刑囚による死刑囚の批判を奇異に感じるのは偏見か。彼は、最期の日まで血を吐くように、短歌を紡ぎ出した。「鴉さわぐ獄舎のめざめいづこにも夭死はあるぞ友よおちつけ」魂のざわめきを感じる。2019/05/07
fubuki
8
【電子書籍】加賀さんが亡くなられたことをきっかけに、初読み。小説ではなく本人の日記?事件発生から8年、死刑確定からわずか5年で処刑された。この時代だからなのか、あまりに早いような。殺人とは言え初犯。死刑廃止論が多くある今の時代なら、獄中作家になってもう少し生きながらえていたかもしれない。それが幸せなのかどうかは別として。殺人は悪だが、本人の告白めいた話を読むと、死刑執行でどんな「いい事」が起こるのだろうと考えさせられる。本当の意味での「償い」は果てしなく重いはずだから。2023/02/19
JunTHR
7
横須賀線爆破事件・純多摩良樹の評伝かと思ったが、一人称で始まったので驚いた。自伝風に事件への道のりが語られ、そして日記のテイで収監後の生活が描かれる。大部分は本人の残したノートや、実際の手紙や短歌、そして著者本人の知る事実を元に書かれているだろうから、完全なフィクションとは言わないが、評伝としては読めなかった。 著者は本人をよく知っているだろうが、それでもやはりこの中で描かれた姿は濾過されていないだろうか。もっとドロドロとしたものはなかったのだろうか。高潔とは言わないが、綺麗すぎやしないか。わからない。2019/01/30