出版社内容情報
日常に浸透していた風俗としての裸体から、明治以降の芸術としての裸体へ。日本人のヌード観とその表現をたどる異色の日本芸術史。解説 木下直之
内容説明
幕末に来日した外国人たちがこぞって驚くほど、日本には裸が溢れていた。理想化されない自然な身体イメージを享受してきた日本人は、江戸末期に初めて西洋の理想的身体であるヌードに出会い、近代化の過程で葛藤と苦難を体験する。本書は生人形や淫靡な錦絵を生んだ幕末の驚くべき想像力、日本という環境で日本女性を描こうとした洋画家たちの苦悩、戦後日本中に乱立したヌードの公共彫刻、海外で高く評価される日本独自の身体芸術・刺青など、さまざまなテーマを横断し、裸体への視線と表現の近代化をたどる異色の美術史。文庫化に際し大幅な加筆を行った増補版。
目次
序章 ヌード大国・日本を問い直す
第1章 ヌードと裸体―二つの異なる美の基準
第2章 幕末に花開く裸体芸術
第3章 裸体芸術の辿った困難な道
第4章 裸体への視線―自然な裸体から性的身体へ
第5章 美術としての刺青
終章 裸体のゆくえ
著者等紹介
宮下規久朗[ミヤシタキクロウ]
1963年、名古屋市生まれ。美術史家。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科教授。『カラヴァッジョ―聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞、地中海学会ヘレンド賞)など多くの著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
62
いや、面白い。美術とは切っても切り離せない関係にあるヌード。本書は明治以来西洋の価値を輸入した日本がどのようにそれを受容してきたかを考察した一冊である。個人的には生人形と刺青の美に興味を持っているので、その二つに触れた部分は特に面白く読む。あと日本のヌードは明治以前に会った豊饒な裸体の数々を禁止し美術という概念上だけで許可したために、枯れ枝に残った葉のような貧弱なものになってしまったような印象。といって昭和に乱立した裸体像はまた違う気もするし。とあれ近代日本美術の裸体通史としても面白く読めました。2025/01/14
やいっち
57
こうした話題は芸術云々に関わりなく大好き。ヌード雑誌や写真集も少なからず手にしてきた。芸術家や研究者らのいかにして日本においてヌードを芸術にし得るかという悪戦苦闘を脇目に、裸体の絵画や写真に惹きつけられる。 2024/03/27
die_Stimme
4
『刺青とヌードの美術史』の文庫化。美術史が専門の宮下先生の著作だけど、近代日本文化史に関心のある人に広く読まれて欲しい名著だと思う。2024/05/03
やいっち
4
仕事の車中の楽しみで読んできた。こうした話題は芸術云々に関わりなく大好き。ヌード雑誌や写真集も少なからず手にしてきた。芸術家や研究者らのいかにして日本においてヌードを芸術にし得るかという悪戦苦闘を脇目に、裸体の絵画や写真に惹きつけられる。2024/03/27
kaz
3
気になった部分を飛ばし読み。西洋と日本との裸体に対する考え方の違いは興味深い。図書館の内容紹介は『美人画や刺青画、生人形など、生身の人間性を感じさせる日本固有の裸体芸術が、明治期に、人格を除去し肉体を誇示した西洋ヌードと出会い、劇的に変容する様を描いた異色の美術史。大幅に加筆し文庫化』。 2024/06/16