出版社内容情報
邯鄲古城、長安城、洛陽城、大都城など、中国の城郭都市の構造とその機能の変遷を、史料・考古資料をもとに紹介する類のない入門書。解説 角道亮介
内容説明
ときに長さ数十キロ・高さ十メートルを超える城壁で都市全体を囲んだ、中国の巨大な城郭都市。はやくは四千年以上前に作られ、一部戦乱期を経て継承・増改築された数々の城壁は地表・地中にその跡を遺し、現在も発掘調査が行われている。本書は、殷から清までのおもな城郭都市の構造を、史料と考古資料をもとに網羅的に紹介する類のない入門書。長安城、洛陽城、北京城など皇帝の住む都城から、地方行政の中心である州城・県城まで。城郭都市の発生、その構造の変遷から浮かび上がるのは、政治や戦争、人々の暮らしの変化だ。豊富な図版とともにあまたの城壁を渡り歩く、ダイナミックな中国都市史。
目次
第1章 新石器時代の城郭遺址
第2章 殷周時代の城郭
第3章 春秋・戦国時代の城郭
第4章 秦漢時代の城郭都市
第5章 魏晋南北朝時代の城郭都市
第6章 隋唐時代の城郭都市
第7章 宋代の城郭都市
第8章 遼・金・元時代の城郭都市
第9章 明清時代の城郭都市
著者等紹介
愛宕元[オタギハジメ]
1943‐2012年。京都大学大学院文学研究科博士課程(東洋史学専攻)中退。文学博士。京都大学名誉教授、元・帝京大学教授。専門は中国史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
33
長安城、洛陽城、北京城など皇帝の住む都城から、地方行政の中心である州城・県城まで、中国の城郭都市の構造とその機能の変遷を、史料・考古資料をもとに紹介する一冊。時には長さ数十キロ・高さ十メートルを超える城壁で都市全体を囲んだ中国の巨大な城郭都市。春秋戦国時代から秦漢時代、魏晋南北朝時代、隋唐時代、宋代と遼・金・元代、明清時代と時代ごとの特徴が解説されていましたが、やはり隋唐から宋に移る過程で重要度が軍事から経済に移ったこと、北方異民族の征服王朝は歴史的にもやはり大きな転換期だったんだなと興味深く読みました。2023/10/09
MUNEKAZ
19
原書は1991年刊。古代から明清までの中国の城郭都市の発展を、社会の変化と絡めながら紹介する。「城」と「郭」はもともと別物で、のちに一体化したため「城郭」という言葉で日本に伝わったなどは「へー」という感じ。平面図が多く載っていて楽しいが、いかんせん図が小さく見づらいのが難点。ただ日中戦争時に日本軍が作成した中国の城郭都市の詳細な図を見ると、後代までしっかりと軍事施設としての役割を果たしていたんだなと妙に感心する。解説で最近の知見が補足されているので、そこもうれしいところ。2023/09/26
さとうしん
16
中国の各時代の都市の城郭の形状、大きさ、都市内部の構造や都城プラン、都市の地理的位置に加え、州郡県といった各時代の行政単位の変遷や戦争の変化など、都市に関係する政治・社会上の変化を追う。先秦の都市についてはさすがに古さが目立つが、巻末の解説が補っている。解説では新石器時代の城壁都市の発見や許宏の「大都無城」説など、本書刊行後の研究の進展や発見を紹介している。2023/09/13
kuroma831
11
底本は1991年。殷周期から明清期までの中国の城郭都市の発展と構造を描く。各時代ごとの城郭の構造を主に考古学の発掘調査による知見から解き明かす。春秋期の都市国家の城郭も一部再利用されながら発展していくため、都市によっては2000年以上に渡る増築・戦乱による破壊・再建が繰り返されており面白い。それぞれの時代の城郭の背景として、政治状況や地方統治区分の差異などから導くのも興味深い。図版も非常に多く、興味深く読める良い本でした。2024/07/15
chang_ume
9
中国各地の城郭都市を各期ごとに詳細解説。北闕型の宮城配置(長安)は意外と例外的ですね。都市構造の変遷について宮崎市定の段階設定が紹介されるが、巻末解説(角道亮介)にて近年の調査成果をもとに再論される。許宏「大都無城」説が興味深い。近世城下町の惣構(集落外郭線)のアナロジーとして読むと、やはり同様に一系的な変遷を論ずることはできず、外郭部(郭)の有無を都市系譜の多元性から理解できないものかと思った。外郭によって包摂される対象は、果たして都市の存在主体をどの程度物語るのだろうか。2024/02/03