出版社内容情報
おくやまゆか 斎藤なずな こうの史代 近藤ようこ 奥田亜希子 うらたじゅん オノ・ナツメ 坂口尚 つげ義春 川野ようぶんどう 太田基之 矢部太郎 白土三平 水木しげる 楳図かずお
解説・酒井順子
「老いが漫画という手段で表現されることによって、そこから来る不安は他者と共有しやすくなるのではないか」(解説より)
カバーイラスト うらたじゅん
「キツネとおばあさん」
カバーデザイン 三宅秀典
内容説明
余生からこそ、人生は動き出す。落涙必至のアンソロジー。おくやまゆか『むかしこっぷり』より、齋藤なずな「水の音」、こうの史代『さんさん録』より、近藤ようこ「豆腐」、奥田亜紀子「あんきらこんきら」、うらたじゅん「かりんの花が咲けば」、オノ・ナツメ『GBパーク』より、坂口尚「花火」、つげ義春「老人の背中」、川野ようぶんどう『島さん』より、太田基之「二十歳の犬」、矢部太郎『大家さんと僕』より、白土三平「老忍」、水木しげる「へそまがり」、楳図かずお「R^ojin」を収録。
著者等紹介
山田英生[ヤマダヒデオ]
1968年生まれ。「内外タイムス」「アサヒ芸能」記者などを経て、書籍・コミックの企画編集、雑誌記事の取材執筆に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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道楽モン
50
編者の山田英生による、ちくま文庫のテーマ別アンソロジーも8冊目。ネタが尽きるどころか、1960〜2020年代まで幅広いチョイスで感心することしきりだ。未知の表現者との初開合も嬉しいが、既知の作者による知られざる名短編を読める歓びが得難い経験となる。博覧強記による選択の確かさに、安心して身を委ねましょう。酒井順子の指摘通り、余生をテーマにした作品の多くは、作者たちの30〜40歳代に描かれている。老いに対する不安のみならず、老境で悟り得る平静さを、心のどこかで求める時期だと、自分の実感から納得できる指摘だ。2025/05/07
阿部義彦
19
ちくま文庫今月(4月)の新刊。今回は余生まんがのアンソロジー。今の日本からは余生なんて概念はもう消えたのではないかと思う事もしばしば。失われた30年により、生きてる限り働くのがデフォルトになり自分も例に漏れず働かないと暮らして行けないのです。それを男女共同参画社会等という口当たりの良い言葉で誤魔化してるが貧乏人にの辞書には引退と言う言葉は無いのだ!ま、それはそれ、様々な年代による漫画で息抜きを。近藤ようこさんには矢張り唸らざるを得ない説得力を感じた。矢部さんの漫画初めて読んだ。解説は老い本の大家酒井順子。2025/04/15
ryohjin
13
酒井順子さんの解説によれば、1980年前後から青年、成人向けの漫画雑誌が出始め、大人も漫画を読むようなったそうです。そうした読者が歳を重ね高齢の読者となり、老年漫画も多く読まれるようになったのでしょうか。余生とはいえ人生は続いており、認知症テーマの作品も3つあります。いずれもその人の過去の想いが、その人の「今」となり、その人の意識に立ち現れてきます。その人にとってのリアルな過去の振り返りになっているように思え、読んでいて心動かされました。15編を読み通してあらためて漫画のもつ表現の多様さ深さを感じました。2025/04/28
ささのは
11
老後がテーマの漫画アンソロジー。書き下ろしではないので他で読んだものもあるが面白くて一気読みした。余生を描くだけあってしんみりとした一筋縄ではいかない人生を描いたものが多く、なかなかに味わい深い。素直で柔らかな作品からカムイや水木しげる、楳図かずおまで幅広い。掲載する作品の順番が違ったら本の印象がかなり変わりそう。『大家さん』と『島さん』はファンなので別格として、『二十歳の犬』がさらりとしたユーモアとペーソスがあり一番印象深く好きな作品。シリーズ化しているようなので他の◯◯まんがも読んでみたい。2025/04/19
ムーミン2号
8
ちくま文庫で山田英生という方が編者となっている「○○まんが」というアンソロジーの一つ。案外と最近の作品も含まれていて、矢部太郎の『大家さんと僕』や川野ようぶんどうの『島さん』も入っている。「余生」という感じではないので、タイトルとマッチするのはどれか、と思いながら読むのもいいかもしれない。個人的にはこうの史代の『さんさん録』のような作品なら「余生」と言えるだろうなぁ、などと思った(他にもあるが、代表として)。オビの「落涙」って、誰が涙を流すのか教えてほしい。「余生」はそんな甘いものではないようだから。2025/05/18