出版社内容情報
戦地で愛馬ツキスミを失い、心に深い傷を負い、記憶も失った復員兵イシザワ・モミイチ。ある日、牧場で働く彼の耳に馬の蹄の音が聞こえてきた……。
内容説明
児童文学者で小説家の庄野英二の代表作になる長編ファンタジー小説。世界大戦の復員兵イシザワ・モミイチは戦地で、愛馬ツキスミを失い、心に深い傷を負って、記憶もまた失っている。ある日、牧場で働くモミイチは、馬の蹄の音を聞き、それに導かれるように山に分け入ると、クラリネットを吹く男に出会う…。刊行当時、数々の名だたる児童文学賞を受賞した名作の復刊。
著者等紹介
庄野英二[ショウノエイジ]
1915‐1993山口生まれ。児童文学者。小説家。1937年入営。39年以降、旧満州、ジャワ、ビルマなどを転々とし、終戦時にレンパン島で抑留。復員後、帝塚山学院の教師を務めながら執筆。63年に刊行した『星の牧場』で日本児童文学者協会賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞、エッセイ『ロッテルダムの灯』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞、著作多数。弟は作家の庄野潤三(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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H2A
14
作者のことはろくに知らず珍しくも表紙買い。復員してから「幻聴」に見舞われるようになったモミイチ。実直で働き者だが、ある時森に炭を取りに行った時にジプシーたちと出会う。ジプシーたちは楽器の名前で呼ばれ自給自足の満ち足りた生活を送っている。そして本来の住処である牧場の主はモミイチを慮って軟禁してしまう。余韻が残る、とは月並みだが過去何度も再版されている通り、確かに良い小説だと思う。植物の名前が多用されていてそこにも幻惑された。2025/05/28
mituhoesaki
3
本屋さんで、ふと装丁にひかれて手に取った一冊。 柔らかなひらがなに包まれた文章のなかには、戦争の記憶と夢のような幻想が共存していて、読みながら何度も立ち止まりました。 育児と仕事のあわただしさの中でふと息を抜きたくなったとき、こんな物語に出会えるのは、私にとっての小さな奇跡のようです。 2025/06/02
kawauso
3
読んでいる間ずっと、花や草木の匂いを感じていた。森の木漏れ日や、鳥の囀り、せせらぎの音なんかも。五感全部を使って読むような、美しい物語だった。直接的な描写がないからこそ、戦争が落とした悲しみをひしひしと感じて、胸が苦しかった。子供の時に読んでいたら、どんな風に感じるのだろう。2025/05/20
ジュースの素
1
○十年前に読んで、かなり記憶にある本。今回の復刊で再度読んでみた。 モミイチは戦争に行ってから記憶を失ったのか、幻覚が見えるようになったのか…。 宮沢賢治の童話に似た懐かしさを感じる。 ジプシーたちの奏でる音楽や優しさが心地よい。 ツキスミにはリアルには会えなかったが。2025/05/31