出版社内容情報
建設業や性風俗業、ヤミ仕事に就いた沖縄の若者たちを追い、暴走族のパシリから始めた10年超のフィールドワーク誌。待望の文庫化。解説 岸政彦
内容説明
生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、一人の若者。その出会いを原点に、沖縄の若者たちをめぐる調査は始まった。暴走族のパシリとなり、建設現場で一緒に働き、キャバクラに行く。建設業や性風俗業、ヤミ仕事で働く若者たちの話を聞き、ときに聞いてもらう。彼らとつき合う10年超の調査から、苛酷な社会の姿が見えてくる―。補論を付した、増補文庫版。
目次
第1章 暴走族少年らとの出会い
第2章 地元の建設会社
第3章 性風俗店を経営する
第4章 地元を見切る
第5章 アジトの仲間、そして家族
補論 パシリとしての生きざまに学ぶ―その後の『ヤンキーと地元』
著者等紹介
打越正行[ウチコシマサユキ]
1979年生まれ。社会学者。首都大学東京人文科学研究科にて博士号(社会学)を取得。現在、和光大学現代人間学部専任講師、特定非営利活動法人社会理論・動態研究所研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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venturingbeyond
54
P.ウィリス『ハマータウンの野郎ども』との出会いから社会学を志すようになった打越先生が、下層男性社会の仕組みと論理を「パシリ」という絶妙な参与観察者のポジションから、本家に勝るとも劣らない活き活きとした筆致で描き出した名著。学知を世に問う同業者やその学知に学ぶ大学生、そして我々一般読者に対して、彼らと現実世界でほぼ接点を有することのない「沖縄」の「下層男性」の若者文化や労働者文化が内包する「(彼らにとっての)合理性」が著者の粘り強い調査によって示される。解説の岸先生の評価通りのエスノグラフィの大傑作。2025/01/08
阿部義彦
23
文化人類学的アプローチとして、参与観察という方法があります。調査の手段として、集団に接触し、信頼関係を構築しその関係を維持して聴き取りを行うというものですが、沖縄の若者達に対する著者の打越さんが取った具体的な方法とは、族のパシリになる事だった。「メンバーにしてください」とかなり年上のオッサンが頼む訳。最初は私服の警察官と勘違いされて苦労しますが、次第に打ち解けて、元暴走族のリーダーにも気に入られ、「ステッカーいるでしょ」と暴走族の名前を網羅したのを原付バイクに貼り付けそこからの事は、ぜひ読んでください。2024/11/22
kuroma831
21
気鋭の社会学者による沖縄のヤンキー社会へ深く潜り込んだエスノグラフィー。参与観察は調査対象者とのラポールをいかに築くかが根幹だが、著者は沖縄のヤンキー社会にパシリとして参加し、建設会社での労働も含め、暴走族や風俗店経営者などと深く付き合い、「地元で生きる」彼らの生活史を描く。「沖縄は貧しくとも素朴で幸せな暮らしをしている」とのイメージは本土からの押し付けに過ぎないと気付かせるリアリティがすごい。本土と沖縄の多重搾取の関係を前提としつつ、地元で生きる彼らは貧困と暴力の中で暮らす。2024/12/28
Mark X Japan
12
参与観察は初めて聞きましたが、実際に出来る人は少ないと思います。沖縄に限らず、日本の底辺の実態です。ヤンキーと地元経済は、職種が違っても同じような構図が国内にたくさんあるはずです。若者が希望に夢と希望と給料を。☆:4.02024/12/12
シンプルねこ(うみねこ)
10
ヤンキーのパシリとなり、書かれた本書。仲間になったからこそ聞けた深い話だろう。社会学者としてだけでなく、人間に対する深い愛情と寄り添いがあったからこそだと思う。先日著者が亡くなられたことを知った。著者のことはこれまでよく知らなかったが、若くして亡くなられた著者の本を読むのは寂しくつらかった。2024/12/23