出版社内容情報
映画館、喫茶店、地下街の噴水広場、島、空港……様々な場所の人間と時間の不思議を描き話題となった新感覚の物語集。一篇を増補。解説 深緑野分
内容説明
学校、家、映画館、喫茶店、地下街の噴水広場、島、空港…さまざまな場所で、人と人は人生のひとコマを共有し、別れ、別々の時間を生きる。屋上にある部屋ばかり探して住む男、戦争が起こり逃げて来た女と迎えた女、周囲の開発がつづいても残り続ける「未来軒」というラーメン屋…この星にあった、誰も知らない34の物語。1篇を増補し、待望の文庫化。
著者等紹介
柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年大阪生まれ。2000年に初の単行本『きょうのできごと』を上梓(03年に映画化)。07年に『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、10年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(18年に映画化)、14年に『春の庭』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
49
私が京都の今の家に住み始めて31年。周囲は随分変わった。住人も変わり、建物も変わる。そうした変化は人の記憶の中に堆積する。柴崎友香さんの作品の永遠のテーマだ。街角の土地。海辺の土地。たばこ屋、カフェ、映画館、アパート、銭湯、駅。人は生きるために建物を建て、リニューアルし、再開発し、風景は変わっていく。河原町へ行くたびに変わる街並みに栄枯盛衰を感じる。周りが様々に変化する間に、ずっと営業する未来軒。「バートンの『ちいさいおうち』だな。」と感じたら、解説の深緑野分さんも書いていた。そんな小さな物語の花束だ。2024/04/12
niisun
46
意識して選んでいる訳ではないのですが、柴崎さんの作品は意外と読んでいます。『きょうのできごと』『寝ても覚めても』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』『きょうのできごと、十年後』『よう知らんけど日記』。この作品は“はじめに聞いた話”と題する連載をまとめたもので、百年近い時の流れとそのうちの数日をフォーカスするような昔話集。“昔々あるところに、兄と弟がいました“というように、どこかの誰かの物語。土地と人の時間軸の違いが生み出す物語。なんでもない1日を延々と語った『きょうのできごと』と対比しても面白い。2024/06/12
HMax
39
34もの短編を一冊にまとめた百年と1日。どうして百年と1日なのかは不明ですが、現在、未来、過去の話が、その土地の一生と合わせて淡々と進む物語の数々。泉の広場の話しはそのまま重なる。今回帰ってきたら噴水がなくなって綺麗になっていて驚いた。以前住んでいた町も駅前の店は大昔からある喫茶店を除いて全て入れ替わっていた、嫌な思い出のKFCもMDもなくなり、よくおまけしてくれたコトブキもなくなり、なんか寂しいなと思って歩いていたら大好きだった和菓子屋は今でも健在でほっとした。何が良いか言えないけどお勧めの一冊。2025/01/28
アナクマ
38
屋上物件の話_「人生が希望どおりになったと思える」ために屋上ばかりに住む男。十数年で6軒。8ページほどの物語。最後に実家を相続しバルコニーを自作。終わり2行で「屋根から落ち、肩を骨折した」ものの話は展開せず翌年再開「そして、犬を飼い始めた」で了。男の行動には連続性があり、最初に動機も書かれている。細切れの事件は起きるものの作者の言いたい事は何なのか。◉どのように読んでもいいのだし、今回は〈しかし人生は続く〉という不可思議さを面白く読めたという事と、そのような時間を過ごせたことをよしとしよう。空が青い。2024/05/11
まぁみ
33
感想が難しい。とても穏やかで静謐で少し冷たさも感じる、時間の経過を五感で感じるような…何とも不思議な読後感。忙しいとき、疲れているとき、特効薬とまではいかないけれど、心にじんわり沁みる掌短編集。無心でさらりと読むのが良いかも。必ずまた読みたくなり…読み返すだろうな、と強く感じた作品。2024/04/20