出版社内容情報
芭蕉が『おくのほそ道』に秘めた謎とは? 「歌枕」の呪術性、地名に込められた意味。俳人の素用、謡曲を元に異界を幻視する。帯文 いとうせいこう
内容説明
芭蕉は、『おくのほそ道』に暗号のようなコード(術語)を潜ませた。「歌枕」の呪術性、地名に込められた意味とは?意図的に未完成のフィクションとした理由は?当時の俳人の素養だった謡曲を元に書かれた古典名作を、能楽師が易しく案内する。この世とあの世のあわいの者として、芭蕉が義経鎮魂の旅をする。死と再生を経て、亡者を幻視し謡い、鎮まる。
目次
第1章 そぞろ神が旅路へと誘う―歌枕を巡る「能」の旅
第2章 謎を解く「ワキ」―芭蕉はなぜ「コスプレ」をしたのか
第3章 死出の旅―現実との別れ、異界との出会い
第4章 中有の旅―「時間」が「空間」になる旅
第5章 再生の旅―「旅心」定まり異界に遊ぶ
第6章 鎮魂の旅―夢の跡に重なる物語
著者等紹介
安田登[ヤスダノボル]
能楽師(ワキ方下掛宝生流)。東京を中心に能の公演に出演。また、能・音楽・朗読を融合させた舞台を数多く創作、出演する。関西大学特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
6
2023年5月刊。芭蕉の『おくのほそ道』の背景には謡曲があったことはすでに指摘されているところですが、本書は宝生流の能楽師である著者が、深川から平泉までの『おくのほそ道』の構成を能の視点から解き明かすものです。文体はやや軽すぎ、そこは強引ではという解釈もありますが、気軽に面白く読める一冊です。2023/05/27
kana0202
2
捕陀楽の話が面白かった。あとは日本文化全般にわたって能が重要ということがよくわかった。2023/06/26
Ise Tsuyoshi
1
芭蕉を「能のワキ僧に擬する姿」として捉える考え自体は、尾形氏のような学者も指摘しているが、そうした読み方を能楽師である著者が徹底したのが面白い。「芭蕉が出会いたかったのは、現代人である私たちが考えるような抽象的な『詩魂』ではない。彼は本当に古人の霊と出会い、そして彼らと言葉を交わすことによって、その『詩魂』を生に感じたかったのです」(p.97)。平泉までで終わってしまっているのが残念。後半の旅も、この調子で解説してほしかった。2023/08/25
takataka
0
★★★★☆奥の細道はいくつかの俳句は学校で習ったことがある、という程度の知識だったが、そこには古典に裏打ちされた教養があるとさらに理解が深まるという。言われてみればそのとおりだと分かるが、有名な俳句だけつまみ食い的に覚えているだけで、クイズ番組的な知識を増やしがちな考え方には気をつけなければいけないな。2023/07/06