出版社内容情報
常識に抗い、人としての生を破天荒に楽しみ尽くした反骨の男――その鮮やかな視界を自ら描きとる随筆と詩、二つの名作を一冊で。解説 高橋源一郎
内容説明
今よりはるかに異国は遠く、戦争が眼前にあった頃―。妻と共に海外へ旅立ち、帰国後もあらゆる権力からの支配を厭った金子光晴。「天の邪鬼」な反骨の詩人は、母国を批判し、そして案じた。性と肉体の衝撃に曝された幼少期、放埓な青年期、戦後を経た晩年まで、類なき生涯で眼にした世界の痛みと光を鮮やかに綴る。自叙伝『詩人』と自伝的詩集『人間の悲劇』を併録。
目次
詩人 金子光晴自伝(洞窟に生み落されて;「水の流浪」の終り;棲みどころのない酋長国;解体と空白の時代―戦後)
人間の悲劇(航海について;自叙伝について;亡霊について;死について;ぱんぱんの歌;えなの唄)
著者等紹介
金子光晴[カネコミツハル]
詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。1975年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tsu55
16
前半は金子光晴の自伝「詩人」、後半は詩集「人間の悲劇」。 人間の本質に根差した社会への不信や憤り、憎悪を抱えながら、同時ににんげんへの深い愛を抱えた詩人は、自伝の最後をこう結んでいる。 「僕の、僕の本当の心は、もう少し、人間を大事にしようということだけなんですけど……」 この詩人への理解が少し深まって、前よりももっと好きになったような気がする。2023/12/31
nori
4
高橋源一郎イチオシの詩人。「どくろ杯」など紀行文も有名で、「詩人」はそれらに通じるユーモアあふれる淡々とした調子で綴られている。「人間の悲劇」では調子が一転。人の愚かさへの強い非難に満ちた、煽情的な文章となる。散文の合間に詩が挿入される形で散文のほうが分量は多い。★生のありのままの人間を直視する力をもった人だった。きれいな部分だけではなく汚く醜いところまからも目をそらさない。抒情的な装いの「くらげの唄」の中の「ちびた歯ブラシと黄ろい水」のような表現からもそう感じてしまう。2023/09/17
青いランプ
1
この本を読んでますます詩というものがわからなくなった。2025/03/23
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