出版社内容情報
再評価が進むマッカラーズの短篇集。奇妙な片思いが連鎖する「悲しき酒場の唄」をはじめ、異質な存在とクィアな欲望が響きあう触発の物語八編を収録。
内容説明
再評価が進むマッカラーズの短篇集。奇妙な片思いが連鎖する「悲しき酒場の唄」、アルコール依存症の妻に対する夫の愛憎を描いた苦みのある佳品「家庭の事情」、思春期の少女が必死に失うまいとする親密さと愛の形を細やかに描いた「そういうことなら」。異質な存在とクィアな欲望が響きあう触発の物語八編を収録。
著者等紹介
マッカラーズ,カーソン[マッカラーズ,カーソン] [McCullers,Carson]
1917‐67年。アメリカの女流作家。ジョージア州に生まれる。コロンビア大学の創作クラスで学ぶ。最初の長編『心は孤独な狩人』(1940/新潮社刊)でセンセーションを巻き起こした
ハーン小路恭子[ハーンショウジキョウコ]
1975年生まれ。専修大学国際コミュニケーション学部教授。米文学者
西田実[ニシダミノル]
1916‐2006年。米文学者。東京外国語大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
92
「わしの話というのは愛のことだ」。はみ出し者たちのブルース。しゃがれ声に戸惑うが、やがて心の隙間に沁みわたる。そんな気持ちを薫らせる小説集。演者は奇妙で屈折した者ばかり。でもその存在を誰も否定できない。真っさらで何の色も付いてない人は居ない。何があったか知らないが人が弱いのは知っている。心を曝け出す奴を見て、みな自分を見るように見守るのだ。元夫と愛を注いだ従弟がどうなった?、狂おしいコメディ、それが人生。破滅と誇り。人のどうしようもないところ、でも愛すべきもの。it's like that、そんなもんだ。2024/09/22
kaoru
70
巻頭の『悲しき酒場の歌』はマッカラーズの代表作。南部の田舎町で酒場を経営する大女アメリアと元夫の無法者メイシー,いとこのライマンの奇妙な関係には同性愛者でもあった作者の嗜好が微妙に影を落としている。ラストのアメリアの孤独と囚人たちの歌声が強い印象を残す。ピアニストを目指した少女時代に着想を得た『天才少女』、歌人の坂井修一が激賞した『木、石、雲』、南部出身で欧州を渡り歩く新聞記者がNYで前妻とその新しい家族に会う『渡り者』などどれも孤独を抱えつつ人とのつながりを求めてやまない人間が描かれる。マッカラーズの→2024/05/17
優希
49
面白かったです。それぞれの短篇全て1行目から引き込まれる感覚を味わいました。異質な存在が美しい世界を作り出している。こんな小説を読みたかったのかと思わされました。2023/11/08
Y2K☮
37
「悲しき酒場の唄」が待望の復刊。他の作品も含め、著者の史実に触れることで味わいが変わる。でもそんなの知らなくて大丈夫。これ以上ないほどにキャラの立った人物造形に他人事と流せぬ展開の数々。「天才少女」が地味にエグい。昔は当たり前のようにできたことが、今は上手くできない。幼少期を卒業して考える習慣を身に着けたから? あるいは。努力だけではどうにもならぬこともある。だがそう断言できるほどの努力を重ねたか否かは本人にしかわからない。23歳で「心は孤独な狩人」を書いたマッカラーズはそれでもやはり「天才少女」だった。2023/08/15
巨峰
36
作者の代表作の一つとされる中編の表題作を含む小説集。他の人のように知的には書けないけど独特の眼差しが温かくも冷たい。もう一度読んでみたいとおもわせる小説集です。2024/06/17