出版社内容情報
「個人の人生を、どう歴史として残せるのだろう」
家族への親愛と歴史への洞察に満ちた、ある家の記録。岸政彦、星野智幸推薦。解説=斎藤真理子
内容説明
「自分の親戚がどうやら「面白い」らしいことは知っていた」社会学者である著者は、済州島から日本へ来た親族にインタビューする。「社会学は過去をどのように扱えるのか」「ひとの語りを聞くとはどういうことか」自問しながら、著者は伯父二人と伯母二人の生活史を聞きとっていく。亡くなった伯父との約束を果たすべく書いてみせた、ある家(チベ)の歴史。
目次
第1章 生活史を書く
第2章 誰も知らない―李延奎伯父さん
第3章 めっちゃええ場所―朴貞姫伯母さん
第4章 親族の中心―朴誠奎伯父さん
第5章 わからへんこと―朴俊子伯母さん
第6章 美しい済州(アルムダウン・チェジュ)
著者等紹介
朴沙羅[パクサラ]
1984年、京都市生まれ。専攻は歴史社会学。ヘルシンキ大学文学部文化学科講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たま
60
朴沙羅さんによる済州島出身の伯父伯母からの聞き書き。生の言葉で記され勢いで意味を掴むしかないが面白い。朴さんの父は十人兄姉の末子で兄姉は年齢の開きが大きく戦争と混乱がありいつ生まれたかで境遇が異なる。1925年生まれの長兄は済州島で教育を受け小学校教員になり解放後の争闘で逮捕され、刑務所で「いろいろあって」からだをこわし、釈放後四・三事件前に日本に密航する。伯父が刑務所等の不快な体験を語らないように35年生まれの伯母は密航で捕まり2回収容された大村収容所を「刑務所いうても、めっちゃええねん」と表現する。→2024/10/17
buuupuuu
16
家の歴史。家族が共有している出来事があって、済州島での生活や四・三事件の体験、日本への密航などはそれ自体興味を引くエピソードだ。しかし著者はもっと個人的な経験のあり方にも注目していて、家族の不和が一番つらかったという誠奎伯父さんの話や、読み書きできないつらさはひとには分からないだろうと語る俊子伯母さんの話を紹介している。生のまま取り出されたような言葉も面白い。大村収容所を「刑務所いうても、めっちゃええねん」と語る貞姫伯母さんの言葉には、伯母さんのそれまでの生活や、伯母さんのキャラクターが表れているようだ。2022/12/03
Masakazu Fujino
8
作者が、済州島出身の親族の歴史をオーラルヒストリーの手法で記録した素晴らしいドキュメント。すごい歴史です!2024/03/05
タオルケット
2
身近な存在である家族が、それまでの人生を語る。実際に残っている資料と照らし合わせながら、一緒に記憶の海に身を投じるように話を聴く著者の姿勢が印象的で、生活史を編むことの難しさが伝わってきた。 また、私にとっても、在日コリアンは遠い存在ではないはず。それなのに、韓国の近代史についてほとんど知らないことばかりで、勉強になった。2023/04/16
しじま・炎のラニーナchang
1
放心している。聞き取り調査をするひとだけじゃなくて、ほんとうに全員に読んで欲しい本です。2025/06/26
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- 和書
- 人情馬鹿物語 〈続〉