出版社内容情報
平穏で平凡で平坦な日常生活。その下で静かに息づき、崩れる"何か"──『侍女の物語』『誓願』を放った世界的作家が描く6つの短編。解説 大串尚代
内容説明
無難な仕事、かわいい心臓外科医の夫、尊敬できる女友達、不満はあれど庭付きの家。望んだものに囲まれて、サリーの人生は“そこそこ素敵”なはずだった。彼女の中に広がる空洞、虚ろな穴がたとえどれだけ深いとしても―。(「青ひげの卵」)平穏で平凡な生活の下、確かに息づく静かなカオス。終わりなのか、始まりなのか?有機的でアイロニカルな六つの短編
著者等紹介
アトウッド,マーガレット[アトウッド,マーガレット] [Atwood,Margaret]
1939年カナダ生まれ、トロント大学卒業。66年にデビュー作『サークル・ゲーム』(詩集)でカナダ総督文学賞受賞ののち、69年に『食べられる女』(小説)を発表。85年に『侍女の物語』で再度カナダ総督文学賞、87年に同作でアーサー・C・クラーク賞、96年に『またの名をグレイス』でギラー賞、2000年に『昏き目の暗殺者』でブッカー賞及びハメット賞、19年に『誓願』で再度ブッカー賞を受賞。ほか著作・受賞歴多数
小川芳範[オガワヨシノリ]
1962年生まれ。翻訳家、ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業、ブリティッシュ・コロンビア大学哲学科博士号取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
42
初期短編6つ カナダの作家 ネコ好きぽい2023/04/06
tsu55
29
マーガレットアトウッドの短編6作。傍目にはこれ以上の幸せはないように映る夫婦の足元に静かに漂う不穏な空気を描いた表題作の「青ひげの卵」。 気鬱な夫のために休暇を取って出かけた旅行での、ちょっとした危機を淡々と、そしてちょっぴりユーモラスに描いた「緋色のトキ」。この2作が好きです。2022/12/31
加瀬しもん
8
アトウッドの書く女性は読んでいて居心地が良い、魔性の女でも聖母でもなければ闘士でもないから。ままならん人生を自分なりに生きて、苛立ちや苦しさを飲み込んだり、吐き出しだり。女性がきちんと人間している。それはともかく収録された五つの短編のなかでは「罪食い人」が気に入った。物語の根底に「私」が抱える怒りと悲哀が流れ続けていることや、ジョーゼフの人生の糞っぷりを肯定して取り組むしかないという考えかたが好き。ジョーゼフの罪は星型のクッキーになって「私」の夢の中で輝くところなんて、何だか泣ける!2024/09/05
musis
6
とても好き。淡々と、でも鬱屈していて、少し不気味で。日常ってこんな感じかな…と思わせてくれる。2023/01/25
いっこ
5
アトウッドは、『侍女の物語』『誓願』とディストピア小説しか読んでいなかったが、外目には平穏な生活を送る女性たちの精神世界に引きずり込まれてしまう。「サンライズ」のイヴォンヌの好みがなぜテーブルクロスのかかっているレストランなのか、読み進むうちに心の内はこんな風にも描けるのかとはっとした。2023/03/01