出版社内容情報
終戦直後のベルリンで恩人の不審死を知ったアウグステは彼の甥に訃報を届けに陽気な泥棒と旅立つ。歴史ミステリの傑作が遂に文庫化! 解説 酒寄進一
内容説明
1945年7月、ナチス・ドイツの敗戦で米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が米国製の歯磨き粉に含まれた毒による不審死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、なぜか陽気な泥棒を道連れに彼の甥に訃報を伝えに旅出つ―。圧倒的密度で書かれた歴史ミステリの傑作、待望の文庫化!
著者等紹介
深緑野分[フカミドリノワキ]
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきら
118
時代も含めた背景描写がものすごくリアルで(本当にリアルかは分からないけど)、主人公と旅をしている気分になる。旅なんて暢気なものではないけれど。 ミステリも本格的で終始ハラハラでした。 どうしても、今のロシア-ウクライナ情勢を重ね合わさずにはいられない。 歴史は繰り返さないが韻を踏む、ってのはそうなんだろうと思いました。 2022/04/26
venturingbeyond
117
『戦場のコックたち』に次ぐ、著者2冊目。前作にも唸らされたが、今作も敗戦直後のベルリンで、敗戦に打ちひしがれながら、ナチズムに併走した自らのあり方を振り返り、純然たる「善良な被害者」として自分たちを位置づけることのできない市民の心持ちが、主人公・アウグステの心情描写からありありと浮かび上がってくる。ナチズムへの積極的同調者とは異なり、父母を戦中に失い、ユダヤ人や障害者に対する迫害に心を痛め、地下活動に身を投じて弱者を救おうとしたアウグステが、自らの罪責を問わなければならない戦争の災厄が何ともせつない。2022/03/21
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
92
舞台は1945年7月ナチスドイツ降伏後のベルリン。ドイツ人少女アウグステの恩人が、歯磨き粉に仕込まれた毒により不審な死を遂げる。彼女は嫌疑をかけられつつも、彼の甥に訃報を伝えるべく旅出つ。帯には「歴史ミステリーの傑作」とあるが、ミステリー色はかなり薄めで、元俳優の連れと荒廃した戦後の街を巡るロードムービー的なお話。ナチス支配により戦争に突き進む様子や、戦後の混乱するドイツの様子が詳しく語られており、その点は読み応えがある。ただミステリーを期待した読者にとっては単に長いだけのお話なのではないだろうか?★★★2022/07/16
かぷち
77
第2次世界大戦直後の分割統治されたベルリンを舞台に、ドイツ人少女とユダヤ人の泥棒の2日間の冒険を描いたバディ物。凄まじいまでの熱量と緻密な描写で当時の情景を蘇らせる筆致は圧巻だし、文句無しの傑作だとは思うんだけど不思議と心に響かなかった。理由は幾つかあって、一つは作家さんの作品に対する思い入れが強すぎ暑苦しかった事。もう一つは登場人物が仮面を被った舞台劇の俳優のようで、生身の人間としての魅力を感じなかった事。全体的に重くてページ数以上に長かった。疲れたよ。2025/01/01
湯湖
77
「戦場のコックたち」と同様に、この方の作品からは「臭い」を物凄く感じる。そして、当時のベルリンの状況も想像できる。ラストは正直なところスッキリとはしないが、読み応えが凄い。2022/05/27