出版社内容情報
お金とはいったい何なのだろう? お金の本質について、「千円札裁判」で日本現代美術史に一石を投じた赤瀬川原平が思索をめぐらせる。解説 山口晃
財布は拳銃や刀に似ている。護身用であり、権威にもなるからだ。財布は人を殺すための道具ではないけれど、「人は金のために人を殺したり、金のために自分の首を吊ったりして、金はやはり隠然たる凶器の光を忍ばせている」──。お金とはいったい何なのだろう? 「千円札裁判」で日本現代美術史に一石を投じた赤瀬川原平が、お金の本質について考える。
解説 山口晃
内容説明
財布は拳銃や刀に似ている。護身用であり、権威にもなるからだ。財布は人を殺すための道具ではないけれど、「人は金のために人を殺したり、金のために自分の首を吊ったりして、金はやはり隠然たる凶器の光を忍ばせている」―。お金とはいったい何なのだろう?「千円札裁判」で日本現代美術史に一石を盗じた赤瀬川原平が、お金の本質について考える。
目次
1 財布と拳銃
2 現金は血液
3 お金の祖先
4 ニナの手形
5 悪貨は良貨を駆逐する
著者等紹介
赤瀬川原平[アカセガワゲンペイ]
1937年横浜生まれ。画家。作家。路上観察学会会員。武蔵野美術学校中退。前衛芸術家、千円札事件被告、イラストレーターなどを経て、1981年『父が消えた』(尾辻克彦の筆名で発表)で第84回芥川賞を受賞。2014年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
82
「こどもの哲学 大人の絵本」シリーズ3作目。今回はお金がテーマ。赤瀬川さんの「千円札裁判」を思い出すが、お金は凶器でもあり、血液でもあると展開する。その着眼点は面白いのだが、何故か前2作ほどハッとしない。それは、現代がお札でなくキャッシュレスの世界になってきたせいではないかたと思った。今は、お金というものを目にしないことが多いし、触れることも少なくなった。スマホでピッとやるだけで物が買えてしまう。ただ、この本にも「お金はますます見えなくなった」という文もあり、赤瀬川さんは、今を想像していたのかもしれない。2022/05/15
へくとぱすかる
55
コートを預けることが、まるで武器をあずけて丸腰になることと、同じ感覚ではないのか、という話からお金の話に自然にシフトしていく。その自然さが絶妙で、「お金とは何か」という、まさに哲学的な議論をすんなり受け入れさせてくれる。サイフからのぞく一万円札の絵がリアルなのは、赤瀬川さんの「千円札裁判」をどうしても連想する。Ⅳ章の、飼い犬のニナの話には、一番びっくりするが、約束手形の「約束」の意味を、しっかり悟ったと思う。そこからお金(コインでもお札でも)の意味にたどりつくには、わずか一歩しかない。入門書としてすごい。2022/05/18
空猫
38
『レモンをお金にかえる法』という絵本が分かりやすくて、経済学について初めて読む本には最適だと思っている。本書はもう少し詳しくて、それでいて哲学的でもあり、次のステップに最適だ。…「お金」とは、銃(武器、刀)の、あるいは血のようである…。赤瀬川氏の「子供の哲学 大人の絵本」というシリーズらしい。挿し絵もお洒落だし。続刊もどんどん読むよ。2022/09/25
阿部義彦
22
赤瀬川原平さんの哲学絵本の第3弾です。今回のテーマはお金です。結局貨幣は『国会で青島幸男が決めたのだ!』byバカボン ではないですが決まり事に過ぎない事を暴露しています。共同幻想ですか?そして、それからの飛躍、犬だって約束手形を知っているには魂消ました。この部分はたしか文章でも書かれていたと思います。ご本人も生前、胃潰瘍になりながらも1000円札を精密に模写して裁判になっただけあります。その後懲りずに零円札を発行した顛末もあっぱれです。イラストがまた良い味をだしてます。2022/05/18
takka@ゲーム×読書
16
お金=拳銃、お金=血液という発想もなかなか興味深い感性だが、個人的に一番印象に残ったのは、第5章の「悪貨は良貨を駆逐する」である。何事もそうで、時計も名画も骨董も言説も公には質の悪い物が溢れ、本当に価値のある物や本音は出さないというのはまさしくそのとおりだと感じた。お金について考える大学生や大人こそ読みべき絵本として充実した内容だった。2022/05/13