出版社内容情報
豊かな恵みに満ちた森は、時に別世界への通路や魔術的な結界となる。宮崎駿、古井由吉、佐藤さとる、多和田葉子……日常を離れて楽しむ38編。
内容説明
湿り気と静寂と豊かな恵みが満ちる森は、日常を超える別世界への通路だ。人の心の奥にある根源的な存在としての森を語る宮崎駿、森に住む不思議な存在の物語を紡ぐ佐藤さとるや倉本聰、都会の中に森を幻視する稲葉真弓、森林の果てに赤岳の絶壁を見出した亀井勝一郎など、森という魅惑のトポスで生まれた珠玉の37篇がこの1冊に。文学の森を巡って、あなたの物語を探してみませんか。
目次
1 深い迷路の奥で
2 森の音に耳を澄ます
3 森で迎える死と祈り
4 ウィーンの森、ラインの森
5 高原/別荘/ふくろう
6 森林限界とアルピニズム
7 アルプスの少女と山ふところ
著者等紹介
和田博文[ワダヒロフミ]
1954年横浜市生まれ。東京女子大学日本文学専攻教授・比較文化研究所長・丸山眞男記念比較思想研究センター長。ロンドン大学SOAS、パリ第7大学、復旦大学大学院の客員研究員や客員教授を務めた。著書に『シベリア鉄道紀行史―アジアとヨーロッパを結ぶ旅』(筑摩選書、交通図書賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
99
このアンソロジーでは森に関する随筆や小説などが収められています。どちらかというと小説よりも随筆の方が多い感じがしました。戯曲の楢山節考はかなりページを割いているのに、井上靖の氷壁や森敦の月山は本人のエッセイが収められています。多和田葉子さんの狐の森と石川淳のアルプスの少女はかなり楽しめました。ウィーンやライン周りの森についてのエッセイも私には楽しめました。2022/01/28
おか
34
副題の「緑の記憶の物語」がしっくりいく。①深い迷路の奥で②森の音に耳を澄ます③森で迎える死と祈り④ウィーンの森、ライオンの森⑤高原/別荘/ふくろう⑥森林限界とアルピニズム⑦アルプスの少女と山ふところ この七つの区分けで様々な人のエッセイや小説の一篇が収められている。私は一番好きなのは②の 宮沢賢治の「狼森と笊森、盗森」です。やっぱり彼の言葉の使い方 ものの言い方 好きです。そして もう一つ興味深かったのは 宮崎駿の「もののけ姫の演出を語る」です。時間があったら読んでみて下さい、お気に入りがあるかも2025/02/19
踊る猫
27
高校時代に、こういう品のいい現代文の教科書を読んだことを思い出す。危なさがなく(悪く言えば人畜無害)、しかしところどころ毒を備えている、というような。多和田葉子のファンなのでその線から読めればと思ったのだけれど、森というには無理のある作品が目立ち玉石混淆の印象を抱く。いや、バラエティに富んでいるといえば言えるのだが……なんというか、読む日によって全く印象の異なるアンソロジーになっていないかと心配してしまう。この著者は叙情的な作品に惹かれる傾向があるようなので、その線からのマニアックさや偏愛を読みたいと思う2021/02/16
meow3
19
日本人にとって森や山というのは異界、あの世であり神が住む土地。この前提は身にしみついているのですんなり読めましたが、ヨーロッパにおける人と森との関係性や感じ方は知らないので勉強になりました。後半は森というより山岳モノになってしまっているので、むしろ山というジャンルでまとめてもよいのでは?と思います。それにしても宮沢賢治のお話の「森」が粟餅を作りたくて粟を盗むっていうのが斬新過ぎる。2020/12/24
しょうゆ
9
「星の文学館」「月の文学館」に比べるとかなりぼやけているというか、正直微妙だった。後半はほとんど山、しかも登山の話ばかり。後書きのエッセイで「森林と山は同義ではない」という旨の記述があるにもかかわらず、山の話ばかり収められていることに違和感を覚える。日本人にとって山と森は同じようなもの、というのは確かに理解できなくもないが、そうであれば「山の文学館」にすべきだし、「森の文学館」にするなら海外文学を多めに収録すればよかったのでは?と疑問が残る。宮崎駿、宮沢賢治はテーマに沿っておりとてもよかったです。2021/09/12
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