出版社内容情報
フランス発モーリシャス行きの船で天然痘が発生、一行は目的地に近い島で40日間隔離される。薬品も食糧も不足し、死が忍びよる極限状態を描く。
内容説明
フランスからモーリシャスへ向かう船内で天然痘が発生し、一行は目的地近くの島で40日間隔離されることに。医薬品や食品も不足するなか新たな発症者が出て、乗客たちは死と隣り合わせの極限状態を生きる。島の自然、宗主国と植民地、被差別民、疫病、そして若者たちの恋が織りなす豊かで複雑なタピスリーのような人間ドラマ。ノーベル賞作家自身の祖先の歴史に素材を汲み描いた代表的三部作の一作。
著者等紹介
ル・クレジオ,J.M.G.[ルクレジオ,J.M.G.] [Le Cl´ezio,Jean‐Marie Gustave]
1940年南仏ニース生まれ。1963年のデビュー作『調書』でルノドー賞を受賞、一躍時代の寵児となった。インディオの文化・神話研究に挑むなど、文明の周縁に対する興味を深めてゆく。2008年、ノーベル文学賞受賞
中地義和[ナカジヨシカズ]
1952年和歌山県生まれ。東京大学名誉教授。専攻はフランス近代文学、とくに詩。パリ第三大学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひでお
3
初めて読む作家さんで、ずいぶん時間をかけて読むことになりました。作家さん自身のルーツにかかわるいくつかの時代の物語が入れ子状態で語られ、だんだんと、今をかたちづくる歴史が見えてきます。ただ、19世紀のイギリス・フランスの植民地政策の実情やランボーについて、多少なりとも知識があったほうが理解の助けになるのだと思います。加えて孤島に隔離状態となった人たちの極限状態や、そして生々しく描かれる恋についても、たくさんの要素が折り重なっていて二度三度読み返す必要がありそうです。2020/12/13
Tozza
1
作者の出自に関わる人物たちを配した半自伝的なフィクション。『調書』や『大洪水』などの初期作品にみられる乾いた文体とは違い、作家的成熟からくる精緻でダイナミックな描写がノーベル賞作家ル・クレジオの完成された文学性を隅々まで堪能させてくれる。2024/09/12
sh
1
作者の祖先の生涯をもとに書かれた作品。作品を書くこと自体が、自身の一族のルーツをたどる旅だったのだろうか。一族が暮らしていた島を追放された祖父らの乗った船から、出港してすぐ、天然痘患者が出てしまい、近くの島に隔離される。その島でさまざまな旋律のストーリーが流れるが、中でも、大叔父と現地の娘の恋愛が、主旋律をなし、現在(といっても1980年ぐらい)の時代における主人公の、先祖を訪ねる旅につながってゆく。並行して、異なる時代の話が流れるので、読むのに少々苦労するが、その分、話の厚みが増している気がする。2020/12/26
BlurMatsuo
0
初ル・クレジオ。モーリシャスに向かう旅船で天然痘が発生し、40日間隔離政策を受けた祖父母の経験を追想する。彼のルーツであるモーリシャス諸島に関する三部作の第二篇という前情報を知らずに読んだが、独立した内容ではあるのでその点は大丈夫だった。作者の意図したことか分からないが、人物描写が虹彩、肌の色のみに終始する感じに辟易した。伯母アンナの章と、作者のメタ視点のような最後の断章は面白かったのでこれは視点の問題なのだと思う。コロナが流行し、日本でも隔離政策が実行されたが、作品になるにはもう少し時間がかかるだろう。2023/11/26
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- 和書
- 組織は人なり