出版社内容情報
内容説明
手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子・F・不二雄、藤子不二雄A、水野英子ら戦後マンガの巨匠たちが、青春時代を過ごしたトキワ荘アパート。そこにはいつもテラさんがいた。「スポーツマン金太郎」「背番号0」などの名作を残したテラさんこと、寺田ヒロオが戦後マンガ界に残した足跡をたどりながら、マンガが青春だった頃の姿を描いた傑作ノンフィクション。
目次
第1章 漫画少年と野球
第2章 マンガ家への夢
第3章 トキワ荘の日々
第4章 マンガブームの時代
第5章 貸本劇画という「異人」たち
第6章 少年週刊誌全盛のなかで
終章 最後に『『漫画少年』史』
著者等紹介
梶井純[カジイジュン]
1941年、東京・目白生まれ。本名・長津忠。出版社勤務のかたわら、1967年に石子順造、山根貞男、高野慎三と「漫画主義」を創刊する。その後も貸本マンガ史研究会に参加し、「貸本マンガ史研究」発行にかかわるなど、マンガについて執筆・研究活動を続けた。2019年7月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
76
再読。寺田ヒロオが死去したのが1992年。翌1993年にちくまライブラリーで刊行され、読んだ。文庫化は2020年。題名からはトキワ荘について書いた本かと思うが、実際は寺田ヒロオの評伝的な内容。1996年公開の市川準の映画『トキワ荘の青春』の原案ともなった。映画が公開された時に、文庫化しそうなものだがね。また、資料協力の遺族に気をつかったのか、テラさんが漫画家をやめた理由を、間接的にしか書いていないが。吉備能人の解説が遠慮なくフォローしており、文庫版を読んだ意味があった。解説に貸本漫画史研究会の話もあり。2022/04/16
へくとぱすかる
73
多数のマンガ家を生んだ、奇跡の「トキワ荘」での群像を描きながらも、一貫して寺田ヒロオの生い立ちから、「筆を折る」まで、そしてその後が述べられる。読み終えても、なぜ、寺田がマンガの世界からの後退を選んだのか、理屈はわかっても、完全な納得はいかない。私が寺田の後退以後のマンガしか知らないせいだろう。著者によれば、マンガ界が変貌するのはさらに何年もあと。つまり寺田は近未来を予測して、確信もあったのだろう。マンガが売れるより、生活を守ろうとしたのかもしれない。「ノンキ先生まんがノート」を再読したいが、無理かなぁ。2020/04/17
fwhd8325
68
調べてみたら、10年くらい前に読んでいました。私は、トキワ荘の中でも、この著書の中心となっている寺田ヒロオさんの漫画が大好きでした。ほぼリアルタイムで読んでいたと思いますが、突然、マンガ週刊誌から寺田さんがいなくなってしまったことを記憶しています。その背景もいろいろ読んだと思います。こんなに良心的なマンガはなかったと、今でも信じています。それが許容されなくなってしまったのも時代の流れだと納得させるしかないのでしょう。2020/03/27
ぐうぐう
34
トキワ荘は、そこに住んでいた漫画家が皆出世したこともあり、また当事者達によって、その逸話がおもしろおかしく描かれたことで、ひとつの聖地と化し、伝説化している。第三者の立場からトキワ荘伝説を綴った書籍も多く存在するが、本書は手塚でも藤子でも石森でも赤塚でもなく、寺田ヒロオに焦点を当てている点で、他のトキワ荘ものとは一線を画している。上京し、トキワ荘に住むことになった若き漫画家達の、頼りになる兄のような存在として、精神的に、ときには経済的にも支え、みんなからテラさんと慕われた寺田は、(つづく)2020/03/23
阿部義彦
20
過去にちくまライブラリーで出ていたのの文庫化です。ここでの主人公は寺田ヒロオです。トキワ荘メンバーの相談役として、親代わりまでつとめた寺田青年、晩年は自ら筆を折ってしまうまでを著者へのインタビューやメンバーの証言を持って評伝の形でその内面を探る内容。労作です。けってし器用に生きられなかった精神的彷徨の記録と類推による遍歴。自分より先ず他人が先にあった稀有な魂の持ち主で、ケレンを嫌った生き方がなんともやるせないです。2020/03/08