出版社内容情報
ギリシャ・ローマ文明の核心部を旅し、人類の思考の普遍性に立って、西欧文明がおこなった精神の活動を再構成する思索旅行記。カラー写真満載
内容説明
西洋文明の核心にはギリシャ・ローマ文明とキリスト教思想がある。この2つが連環するのがエーゲ海。沿岸に点在する無数の遺跡には、西洋文明を理解するための鍵が隠されている…。「知の巨人」がレンタカーで8000kmを駆けめぐり、神と歴史と人間について深い洞察をめぐらせる。人類の思考の普遍性に立って、ヨーロッパがおこなった精神の活動を再構築する壮大な思索旅行記。
目次
序章 エーゲ 永遠回帰の海
第1章 聖山アトスへ
第2章 アポロンとディオニュソス
第3章 聖なる神と性なる神
第4章 ネクロポリスと黙示録
終章 終末後の世界
著者等紹介
立花隆[タチバナタカシ]
1940年長崎県生まれ。東京大学仏文科卒業。ジャーナリスト・評論家。「知の巨人」のニックネームを持つ。主な受賞歴に、菊池寛賞、講談社ノンフィクション賞、毎日出版文化賞など
須田慎太郎[スダシンタロウ]
1957年千葉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。写真集多数刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazuさん
30
立花氏がエーゲ海、特にアトス半島を目指して旅に出る。この半島には女人禁制の修道院が集積する。半島に入る許可が出るまで1ヶ月かかるため、時間稼ぎにエーゲ海一周の旅も行った。この旅で、筆者は各遺跡を前にして、ギリシャ神話からのキリスト教発生について論じ、また、ニーチェの永遠回帰について哲学的思索にふける。それと関連して、フランスの詩人ランボーの"見えた、何が、永遠が"という詩が通奏低音の様に流れる。2022/06/18
まると
29
旅がしたい。海外に行きたい。それが叶わないならせめて気分だけでも、と軽い気持ちで手に取ったのですが、思いの外、凄い本でした。女人禁制の修道院が並ぶアトス半島への入域に始まり、古代遺跡から考えた歴史の本質、神における聖と性、ギリシャ神とキリスト教思想との連関など、中身の濃さに圧倒されました。立花さんは近著で「人間は実体験で驚くことがまずあって、それを理解したいから本を読んだり考えたりする」と語っていましたが、その意味がのみ込めました。やっぱり本物を見に行かなきゃ、という気持ちが益々たかぶる読書となりました。2021/06/23
koji
27
立花さんが亡くなり、未読作品が気になってきました。本書は、立花さんとカメラマンの須田さんが1982年に約40日かけて行ったギリシア・トルコ紀行。特に105頁に及ぶ序章の立花さんの哲学的思索文と須田さんの美しいショットが秀逸。唯唯文字を追いかけぼんやり眺めているだけで永遠の時を感じます。まず「遺跡を楽しむのに知識はいらない。黙ってそこにしばらく座っているだけでよい」という言葉。これからの旅で実践したいですね。もう一つニーチェから引用された「万物は永遠に回帰し、われわれ自身もそれとともに回帰する」。痺れました2021/09/02
風に吹かれて
25
エーゲ海を囲んだ無数の遺跡をレンタカーで駆け巡った思索旅行の記録。 たとえばギリシャ北部の中核都市だったフィリピ。アレクサンドロス大王の偉大な父フィリッポス二世が自分の名を冠した都市であり、パウロが投獄されたところであり、ローマ帝国の覇権をかけてブルータスらとアントニウスらが激突した場所である(p132~)。そういったものは、現地を踏むことで見えてくるものなのだろう。 →2022/05/13
おおにし
24
「千年単位の時間が見えてくるということが、遺跡と出会うということなのだ」と、レンタカーで8000km駆けめぐって遺跡を旅した立花さんは書いている。去年ギリシャで遺跡に出会った私は、この言葉が実感として理解できる。立花さんのこの素晴らしい旅行記を読んで、もう一度ギリシャへ行って遺跡を巡ってみたくなった。ギリシャ旅行をする前にぜひ読むべきお勧め本。2020/04/29