内容説明
主人公・遠山町子は煙草屋の雇われ店主をしながら父親と弟の家族三人で慎ましやかに暮らしている。そんな健気な彼女の姿に惹かれる男性が二人現れ「恋物語」として進んでいくかに思えた話は、恋敵の横槍、そして、父のある行動から起きた事件をきっかけに急展開。仕事も恋も二転三転、想像もしなかった方向へ動き始めた町子の人生に衝撃の結末が待っていた。
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893‐1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。日本芸術院賞受賞、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
127
山あり…の一冊。初読み作家さん。時代は戦前の昭和初期。ヒロイン町子の人生ドラマを描いた物語。この時代をあれこれ想像しながら楽しんだ。家族を支える柱として、娘として、そして当たり前の乙女として、町子の魅力的な姿が物語をひっぱる。彼女を取り巻く環境、取り巻く二人の男性。恋の行方はこのまま順調に…な最中のありとあらゆる想定外の数々の出来事。まさに人生、山あり谷あり…の朝ドラっぽさが良い。そして最後の最後まで目が離せない展開はお見事。致し方ない時代の風が町子の人生に吹き抜けたようなラストがせつなく心に残った。2022/05/13
ヨーイチ
43
惹句に「衝撃の結末」ってあり、「らしくないなぁ」と思いつつ読み進める。ぶんげいさす発行は1939、新聞の連載小説。当時の世相、風俗、地誌(東京、新宿辺)などを味わいつつ、人物造形を想像しながら「全く、テレビ放送の無かった頃になんでホームドラマが描けるんだよぅ」と感心するのもいつものパターン。ちょっと違うのは苦味が強いかなって感じ。文六作品には話を転がす為のアイテムが用意されていて、今回は発明でしかもフリーエネルギー。体制翼賛とか増産、挙国一致てなスローガンが見え隠れする。続く 2019/09/05
Kotaro Nagai
24
本日読了。獅子文六18冊目。本作品は昭和13年東京日日新聞に連載されたもの。真珠湾攻撃の2年前。物語はそんな世情とは無縁に始まります。朝ドラのように。ヒロインの町子、ライバルの美女、対照的な二人の若者と人物の描写が上手くすぐ物語に引き込まれます。やっぱり獅子文六にハズレなし。とはいえ、大団円の終わり方にはびっくり。ここで当時の世情が出てくるんですね。でもドラマ化しても面白そう、あとがきの安藤玉恵さんのようにいろいろ妄想できますね。町子さんは黒木華さんあたりでどうでしょう。獅子文六まだまだ読みたいです。2019/07/30
まあさん
23
獅子文六氏の小説の登場人物は「どこかに居そうだけど、やっぱりいないだろう」そんな感じでしょうか。全く売れない発明を生業とする父と、貧しい家計を支え明るく暮らしている姉と弟…そこに父の再婚や娘の結婚話が同時に持ち上がり、さらには父の「大発明」も急展開…ドタバタ喜劇が始まり楽しませてくれます。この後どうなっていくのだろうと興味を引っ張り、その結末は…なるほど、これは予想できませんでした。氏の他の作品もそうなのですが、所謂ハッピーエンドは少ない…創りものとて世の中甘くないよ…皮肉を込められてもいるようです。2023/10/09
桜もち 太郎
22
久しぶりの文六先生の作品。相変わらず大らかで伸びやかな文体、そして安定感はさすがとしか言いようがない。物語は1938年、第二次世界大戦の開戦1年前に書かれたものだ。新聞小説ということで大衆小説に分類される。二転三転する物語の流れは飽きることがない。しかし結末はと言えば、時局がすべてを持って行ってしまった。残念なのはこの時局を大団円としていること。当時の作家としてはそうするしかなかったのだろう。召集令状に感動するとか・・・。平和な現代で読む身としては、どうしても違和感を感じてしまった。2020/10/13
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