内容説明
ベランダで始めた園芸。ドラゴンフルーツ、朝顔、薔薇、ゴーヤーetc.。花がある側は「ナオガーデン」、食べられる植物がある側は「ナオファーム」。「虫のかじったあとを見て、地球の形もこんな風に変わってきた、と想像する」。ベランダは世界のミニチュア。書き下ろしエッセイ「そのあとのていたらく」を新たに収録。
目次
ラプンツェルのように
ベランダの可能性を引き出す
去年に起きた、愛情の暴走
時間を超える種
コンパニオンプランツとは
芽が出る喜び
薔薇
残酷な間引き
食料にする
旅欲が私を突き動かす
緑のカーテン
ゴミから伸びるもの
奇形を愛でる
台風の日に生まれた
「借景」について
キノコの季節
冬の生活
さようなら、私のベランダ
著者等紹介
山崎ナオコーラ[ヤマザキナオコーラ]
1978年生まれ。性別非公表。國學院大學文学部日本文学科卒業。会社員をしながら書いた「人のセックスを笑うな」が2004年の文藝賞受賞作となり、26歳から作家として活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
154
11階のベランダのバジルが花咲くとスズメがやってくる。こんな高いところまで…そんなに美味しいのかしら。春になると種を蒔きまくる。小さな粒には巨大な生命力という未来が詰まっている。ベランダに植物があれば虫や鳥がやってくる。世界のミニチュア。カラスが来るとビックリするけど。太陽や風や雨との共演が窓枠に広がり、日々の喧騒の中でホッとする。…引越先は広いベランダや日当たりを優先してしまう山崎さんも私も、ベランダ園芸家のようです。この先の人生を、読書をし執筆し、草花を育て畑を肥やし、散歩をして生きていく。素敵です。2021/04/18
クプクプ
74
山崎ナオコーラさんの本は初めて読みました。素敵な園芸エッセイでした。私は植物を見分けることにこだわったり、切り花を買ってしまったりしましたが、山崎ナオコーラさんは、種を蒔くところから園芸に入っていった点が成功でした。マンションの11階に住みベランダで、園芸を楽しんでいきます。ミニトマトやゴーヤーから、薔薇まで、守備範囲は広いです。多感な時期をそのマンションで過ごし、異性との出会いから、話は発展していきます。あとがきで、その賃貸のマンションの地名がわかり、私の視界に鮮やかな映像が浮かびました。(つづく)2024/06/12
ユメ
48
ナオコーラさんの考え方が好きで、彼女のエッセイを読むのが好きである。しかも本書のテーマはベランダ園芸。私も昨年ベランダ園芸を始め、今年から本腰を入れ始めたところなので、大いに共感したり参考にしたり、意義深い読書となった。ベランダは世界のミニチュアである。生命の誕生から死までを内包しているという点でももちろんそうだ。だが、ナオコーラさんはそこから更に踏みこんで、植物の成長から人間の生き方や社会の在り方にまで思いを馳せる。とりわけ、作家としてご自身が社会で果たすべき役割についての考えには感銘を受けた。2019/05/19
ゆりこ
19
書店に行けないので、無印良品の本棚で購入。ナオコーラさんの、独身〜新婚時代のベランダ園芸についてのエッセイ。私もベランダで植物を育ててたので、共感しながら読めました。それでも、あとがきに全部持っていかれる。お子さん達との生活、充実してそうで羨ましい。2020/04/25
ぱなま(さなぎ)
19
ささやかながら観葉植物を育てているが、間引きが憂鬱で家庭菜園はなかなか手が出ない。本書にもこの間引きの残酷さに文学者として悩む項がある。しかし、ある意味で作品世界の神である作家と、菜園の主であるということは似ているのかもしれない。現実では間引くしかなかった存在に、文学は手を差し伸べて居場所を与えられるのではないか。などと思う。 筆者の文章はつねに率直で正直であろうとする。そのことに打たれる。私は普段、いかに虚飾で隠され真実の見えない言葉ばかり使っていることか。それはそれで、言葉の恩恵でもあることだが。2020/01/09