内容説明
サリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」、村上春樹の「貧乏な叔母さんの話」、内田百〓の「冥途」など、5つの物語に登場する“この世にないもの”を小川洋子が注文し、クラフト・エヴィング商會が探し出す…。はたして「ない」はずのものは、注文主に届けられるのか?現実と架空が入り混じる世界で、2組の作家が想像力の火花を散らす前代未聞の小説。
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山市生まれ。1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞受賞。著書に『博士の愛した数式』(読売文学賞・本屋大賞)、『ミーナの行進』(谷崎潤一郎賞)、『ことり』(芸術選奨文部科学大臣賞)など。また聞き手の名手でもある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
130
小川洋子さんとクラフト・エヴィング商會のコラボによる面白い試みの作品です。これもすでに文庫本ではない方で読んでいて再読ですが楽しめます。小川さんがすでに読んでいた5つの文芸作品で疑問に感じたものを注文してそれに対してクラフト・エヴィング商會が納品を行い、小川さんがそれに対しての面白い観点からの回答を受領書ということで書かれています。両者の力のこもった掛け合いが楽しめます。2024/05/19
rico
106
クラフトエヴィング商會のことを知らなくて、小川さんの作品だと思って手にとったのですが・・・まいりました。何と贅沢なんでしょう!物語の中から生まれた「ないもの」の注文書、見出された「ないもの」の納品書(美しい写真つき!)、そして受領書で広がる「ないもの」の豊かな世界。「物語の応酬」、帯に書かれたこの言葉そのままの真剣勝負。そしてそれがそのまま、物語への道しるべとなる。芳醇なワインのよう、と言ったら言い過ぎでしょうか。じっくりと味わいたい1冊です。ところで、私も注文したいものがあるのですが、いいですか?2019/10/12
はっせー
78
不思議な小説が好きな人や色んな小説が出てくる小説が好きな人におすすめの本になっている!小説の可能性を広げるような面白さがあったー!存在するかどうかわからないものを探す依頼人がクラフトエヴィング商會さんにそのものを依頼して納品していくお話になっている。注文書と受領書の部分を小川洋子さんが描き、納品書をクラフトエヴィング商會さんが書いている。ここでの依頼物が読んだ本に出てくるものというなかなか不思議な依頼。それをどう答えていくのかがクラフトエヴィング商會さんの腕の見せ所であった!2023/11/12
Vakira
77
物語は既にここにある。洋子さんの物語創作の可能性への挑戦。今回は既存の小説が発想の元となる5編の短編集。今回は発想の幅を広げ、ヴィジュアル表現追加が脳刺激。「ないものでもある」商会。依頼人の注文書、納品書、受領書と3ステップで表現される。ここに小説表現の挑戦、納品書には商品の写真。写真のお陰で物語はリアリズム。これの描写がいい。レトロで妖しく、物語を読むと愛しくなる。出た。妖愛小説の始まりだ。蚊の眼、ウナギの耳石、肋骨の蓮、背中の叔母さん。これが依頼された商品。ほらね、妖しいでしょう。もう妖愛に溺れます。2022/03/21
nemuro
69
2021年3月「くまざわ書店東神楽店」での購入。私の好きな2組の作家による共同制作らしく迷わず買ったに違いない。サリンジャー「バナナフィッシュにうってつけの日」、川端康成「たんぽぽ」など5つの物語に登場する<この世にないもの>を小川洋子が注文しクラフト・エヴィング商會が探し出す。「シナリオなしの真剣勝負、全5幕」。「つくり始めてから早いもので9年が経ちました」と述べている。もとの小説を知らなくても存外に面白かった。「冥途の落丁」(内田百閒「冥途」が源泉)が印象的。村上春樹「貧乏な叔母さんの話」も気になる。2024/01/17
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