出版社内容情報
諦念、介護……、老いをテーマにしたマンガ集。水木しげる、手塚治虫、白土三平、つげ義春、近藤ようこ、高野文子、岡野雄一らを収録。解説 宮岡蓮二
内容説明
諦観、執念、生死、記憶…、老いがテーマの傑作マンガ集。
目次
1(生命(永島慎二)
ブラック・ジャック 湯治場の二人(手塚治虫)
水茎(一ノ関圭))
2(欅の木(谷口ジロー(原作・内海隆一郎))
垣根の魔女 御身大事に…(村野守美)
極楽ミシン(近藤ようこ))
3(なまけ武蔵―晩年の武蔵(水木しげる)
武蔵(つげ忠男)
ふじが咲いた(楠勝平))
4(ペコロスの母に会いに行く(抄)(岡野雄一)
五月の風の下(うらたじゅん)
田辺のつる’(高野文子)
5(長八の宿(つげ義春)
ざしきわらし(白土三平))
著者等紹介
山田英生[ヤマダヒデオ]
1968年生まれ。内外タイムス、アサヒ芸能記者などを経て、現在では、書籍、コミックの企画編集、雑誌記事の取材執筆に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がらくたどん
79
ちくま書房の山田さん編集のテーマ・アンソロジー「まんが」シリーズの一冊。少し前に入手しポチポチ時間をかけて愛おしむように読んだ。そうそうたる作家諸氏による14編の短編漫画。五章に括り、それぞれに老いてなお朽ちぬ執念・老いを受け入れたしなやかな生き方・枯れ切らぬ自意識の面映ゆさ・認知症の向こうに見えるその人の豊かさ・人生の終焉に見る死に様が、個性的な筆で描かれる。老境の一人暮らしを描いた「垣根の魔女」「極楽ミシン」「五月の風の下」と認知症の老女を幼女に見立てた高野文子の「田辺のつる」が印象的。豊かな作品集だ2023/03/05
古古古古古米そっくりおじさん・寺
76
ちくま文庫は以前『貧乏まんが』というのを出していたが、同じ山田英生編でこれが出ているのを見てなんだか嬉しかった。解説によるとこの作品集で一番古いのが白土三平『ざしきわらし』だそうだが、これは本当に名作である。水木しげるとつげ忠男が共に宮本武蔵を扱った漫画だが、水木さんのは確かに老境だが、つげさんのは老境ではない気もするのだが。岡野雄一『ペコロスの母に会いに行く』からの数篇がやはり素晴らしい。老いや認知症をこういう風に眺められるのは、やはり物凄い才能。手塚治虫『ブラック・ジャック』のこの話も好きだった。2019/03/13
keroppi
63
「老境」をテーマにした漫画アンソロジー。老いは、誰にでもやってくる。そこには、それまで生きてきた人生が映し出される。「ペコロスの母に会いに行く」が、やはり染みるなぁ。ただ、これらの老境を描いた漫画家は、「ペコロス」を除いて、まだまだ若い頃ではないだろうか。きっと、これから、老境を迎えた漫画家が描く真の意味での「老境まんが」が生まれるような気がする。2019/04/11
Vakira
59
たまたま 手に取ると 手塚治虫、白土三平、水木しげるの短編収録。思わず買ってしまう。 これは老い、介護、死がテーマの14編の短編集。なんと1960~70年代だからもう50~60年前の作品集。山田英生さんが編集。初っ端 永島慎二の「生命」絵本の様な作品だがオオカミと猟師の戦い。ジーンときました。知っている作家は7人だけでしたがこの文庫のお陰でまた広がる。白土三平がまた懐かしい忍者ものでまた読んでみたくなった。 2019/08/06
ホークス
52
老いがテーマの漫画集。侘びしく可愛いく、深い知恵を感じさせる。ブラックジャックが凄腕の老鍛治職人にメスを鍛えてもらう話は、鍼師として琵琶丸も登場し「どろろ」の雰囲気。結末では人間の驕りが厳しく問われる。「垣根の魔女」は、特攻隊で息子を亡くしたお婆さんの話。検閲の墨に隠されていた言葉が蘇り、お婆さんの心をほぐす場面が切ない。「ペコロスの母に会いに行く」は、認知症の始まった母を施設に尋ねる息子の話。可愛い絵と優しい長崎弁にほのぼのとし、原爆の悲しい記憶に涙がこぼれる。つげ義春「長八の宿」も味わい深い。2019/12/19