出版社内容情報
二つの名前を持つ作家のベスト。文学論から落語からタモリまでの芸能論、ジャズや映画論、作家たちとの交流も。阿佐田哲也名の博打論や食についても収録。解説 木村紅美
内容説明
純文学作家・色川武大と雀聖・阿佐田哲也というふたつの顔をもつ男。突然眠り込んでしまう奇病ナルコレプシーに悩まされつつも、鉄火場をくぐり抜けたその目は、外界に向けられるとき常に鋭く、また暖かい。色川名の時代、文学、芸能、ジャズ・映画、交遊。阿佐田名の博打、食。息を飲むような気迫あふれるエッセイを全7章に編んでお届けする。
目次
1 時代
2 博打
3 文学
4 芸能
5 ジャズ・映画
6 交遊
7 食
著者等紹介
色川武大[イロカワタケヒロ]
1929年東京生まれ。東京市立三中中退。戦後の数年間、賭場を渡り歩く。雑誌編集を経て、’61年「黒い布」で中央公論新人賞を受賞。その後、阿佐田哲也の筆名で多くの麻雀小説を執筆。’77年『怪しい来客簿』で泉鏡花賞、’78年『離婚』で直木賞、’82年「百」で川端康成賞をそれぞれ受賞する。’89年には『狂人日記』で読売文学賞を受賞した。1989年4月没
大庭萱朗[オオバカヤアキ]
1962年北海道生まれ。出版社勤務を経て、文芸評論家・フリー編集者として活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
34
中学生の頃麻雀を覚えた。今から思うと麻雀の情報が満ち溢れていた時代で出版物もさることながら、大橋巨泉が11PMで対局番組をやっていたりした。と言うわけで阿佐田哲也の名前も顔もいつのまにか頭に入っていた。その後小林信彦を始めとして色々な作家が、その人柄と蘊蓄を紹介していることを知り「読んで見たい作家」として認識することになる。本作はちくま文庫の「ベストエッセイ」の名に恥じぬ編集で、この不思議な作家の魅力を堪能できる。「文学」!ってカテゴリーが有り、「不良の博打打ち」の物書きへの道程が示されている。続く2018/03/11
レモングラス
26
色川武大さんが編集者をされていた頃の、山田風太郎さんのお宅へもちょくちょく原稿をとりに通っていたエピソードが好きで何度も読み返し、渥美清さんとの座談もとてもいいし、素敵な交遊に、優しさや暖かさがあふれていて広量で、読んでいると心が落ち着き、安らぎ、励まされる。色川さんが川端康成賞を受賞されたときの、藤原審爾さんの「”百”って小説はいいよ。色ちゃんはときどき深い仕事をするね」も好き。藤原邸での文学塾のことも少しふれられている。2020/12/09
阿部義彦
20
ちくま文庫新刊です。坊や哲として記憶している阿佐田哲也さん、そして、直木賞作家の色川武大、二つの顔をもち、落語、映画などエンタメにも見巧者でもあり、自分の道を突き進むはぐれ者体質の著者のエッセイをひとまとめに文庫に圧縮!私は中学時代に麻雀に嵌ったので、当時ジャンケンと言う月刊誌があってそれで写真をみたのが出会いでした。それから新書版で出ていた麻雀小説を買い漁り、文筆家としては後から知りました。「怪しい来客簿」が今でもマイフェイバリットです。筒井康隆さん小林信彦さん川上宗薫さんなど友人にも恵まれました。2018/01/20
reading
13
初読み。豪快で波乱に富んだ人生。興味深く読めた。文才に富んだ作家だった。2023/05/18
たびねこ
7
見ている風景、目のつけどころ、モノゴトのとらえ方が誰とも違うが、誰よりも真実を言い当てているような気がする。ばくち打ちの経験から語る「九勝六敗を狙え」は何とも奥深い。一見崩れた印象の著者だが、文章は知性的、格調すら感じる。2018/08/10