出版社内容情報
治安の総帥から政治家へ。――異色の政治家後藤田正晴は、どのような信念を持ち、どんな決断を下したのか。その生涯を多面的に読み解く決定版評伝。
内容説明
人呼んでカミソリ後藤田。警察官僚、治安の総帥として辣腕をふるい、政治家に転身して以降は、官房長官として、政治改革の中心人物として活躍。異色の政治家後藤田正晴は、如何にして生まれ、どのような信念を持ち、どんな決断を下したのか。幼少期の父母との死別、戦時中「九死に一生」を得た合理的な思考、「尊敬する人物はいない」と断言する姿勢―多面的に読み解く決定版評伝。
目次
序章 峠の記憶
第1章 現実をみる少年の目
第2章 国家への素朴な問い
第3章 自立した旧内務官僚の道
第4章 治安の総帥としての素顔
第5章 「指導者の黒子」という衣
第6章 官房長官の闘い
第7章 政治改革とその時代
終章 幻の「後藤田内閣」
補章
著者等紹介
保阪正康[ホサカマサヤス]
1939年、北海道生まれ。同志社大学文学部卒業。日本近代史、とくに昭和史の実証的研究を志し、歴史の中に埋もれた事件・人物のルポルタージュを心がける。個人誌「昭和史講座」を中心とする一連の昭和史研究で菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
26
先入観を裏切る形となった。カミソリとのあだ名ばかりを見ていた。「麦踏み」からわかるとおり、基本は、愚直な積み重ねにある。政策も警察のころはいざ知らず、基本に忠実にのっとったものだった。2024/07/12
ランラン
7
今この手の骨のある政治家が少なくなったことは寂しい限りだ。金権政治の田中角栄との繋がりに疑問を持っていたが人としてのつながりを重視していたことが理解できた。2024/06/14
オールド・ボリシェビク
5
後藤田正晴、大きな人だったのだなあと痛感する。内務・警察官僚、田中角栄の懐刀、中曽根内閣の官房長官とたどった道を見ると、保守本流・体制そのもののようにも思えるが、さにあらず。晩年は政治改革の実現に邁進した。要は「思想」からものごとを判断するのではなく、現実に対応しつつ、最も現実的な判断を下すリアリスティックな政治家だったということだ。その立ち位置は、極めて難しいのだ。後藤田のような大正生まれの、戦争を体験した筋の通った政治家が消え、反知性的な、歴史を見ない政治家が跋扈する悲劇を思う。2023/06/11
Galilei
5
危機管理の神様。コロナウイルスで右往左往してる現在、つくづく後藤田がいたらと。著者が何ゆえリベラルの保坂である事かが、後藤田のひととなりを表している。即ち、自衛隊と戦争は専守防衛のみで、護憲という点が、思想の異なる保坂と一致。また後藤田の評価は、所属や利害は棚に上げ、人物そのものだった。一方、自身の過去の選挙違反は、これだけは何とも如何しがたいと、選挙協力者を一切責めず、自身の甘さだと潔い。先日、吉村大阪府知事が「政治家は使い捨てでいい、」と発言したが、後藤田はボロ雑巾になっても最後まで主張を訴えていた。2020/05/04
穀雨
4
警察庁長官や内閣官房長官を歴任した政治家の重厚な評伝。全体の構成も緻密で、とても充実していながら読みやすい。本人へのインタビューにも基づいているため若干割り引いて読む必要はあるだろうが、カミソリ後藤田というあだ名の通り、ここぞというときは自らの信念にどこまでも忠実な、一本気の人物であったことがわかった。2017/12/22