出版社内容情報
好きな場所は本や雑誌の堆積の下。アニゼットの空瓶に夜の燈火が映る部屋。子どもの視線を持つ作家・森茉莉の生活と人生のエッセイ。解説 松田青子
森 茉莉[モリ マリ]
早川 茉莉[ハヤカワ マリ]
内容説明
好きな場所は本や雑誌の堆積の下。アニゼットの空瓶に夜の燈火が映る部屋。黄色い西洋水仙を挿すのはピックルスの空壜。お湯に入って清潔な体をタオルで拭く気分のよさ、タオルやソックスを選ぶ情熱、そして、そして…。美しいものに触れて子どものように心を震わせ、人生のそばにはいつも「書くこと」があった作家・森茉莉の暮らしと生き方のエッセイ。全集未収録33篇を含む森茉莉の真骨頂ここに在り!
目次
第1章 楽しさのある生活(楽しさのある生活;硝子の多い部屋 ほか)
第2章 書くことの不思議な幸福(書くことの不思議な幸福!;やわらかな気持ちでよい文章と暮らす ほか)
第3章 私の好きなもの(椿;奈良の木彫雛 ほか)
第4章 人生の素晴しい贈物(私の直感;一九五八年 ほか)
著者等紹介
森茉莉[モリマリ]
1903‐87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父を憧憬する娘の感情を繊細な文体で描いた随筆集『父の帽子』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、50歳を過ぎて作家としてスタートした。『恋人たちの森』で田村俊子賞、『甘い蜜の部屋』で泉鏡花文学賞
早川茉莉[ハヤカワマリ]
ライター、編集者。『すみれノオト』発行人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
大きな森の小さな本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
117
森茉莉のエッセイは幾つか読んできたけれど、本作が一番良かったです。自分が心地良いと思う物に囲まれ、美しい物だけを見てきた彼女の生き方はなかなか出来る事ではないだろう。森茉莉と言う人はふわふわと、夢のような中で生きてきた永遠のお嬢様だ。「やわらかな気持ちでよい文章と暮らす」では作家としての彼女の矜持を見た気がして心動かされました。ラストを飾る「真直ぐの道」で語られる「不幸」についての記述は読者を勇気づける名文だ。悲しい事も辛い事もある人生に於いて「全ては楽しんだ者勝ち」という彼女のモットーが朗らかに心地よい2017/09/07
ヒロミ
52
子どもの頃友人宅に遊びに行った際、六角形の綺麗なアルミ箱にぎっしり詰まった宝石のように美しいチョコレートを振る舞われたが、そのとき美に触れた原風景を思い起こさせてくれるかのような、森茉莉の豪奢な美文で綴られた随筆集。本のタイトルが秘めやかな美しさを感じて好き。森茉莉は三島とも親交が深かったが、三島とはまた違った和洋折衷の美の探究者である。ボワイエやグレコのシャンソンを流しながら気怠い午後に読み返したい一冊です。2018/01/26
こばまり
50
通勤電車の中で読んではしっくりこないはずだ。今日の私のように窓辺で風に吹かれて浸るが相応しい。2017/09/11
ユメ
45
森茉莉の文章は、どんなに短くとも必ずきらりと輝く宝石を秘めていて、いちど知ったらやみつきになってその紅い煌めきを追い求めてしまう。茉莉の宝石はお金で買えるものではない、心で生み出すものだ。茉莉のエッセイから私が得たいちばんの教えは、幸福とは自分の心の持ちようなのだということである。思えば茉莉の人生は激動だ。生活水準という点で見ても大きな変動があっただろう。しかし茉莉は、後半生こそ自分の部屋の中を幸福で満たしてご機嫌に暮らしている。その「贅沢貧乏」の精神に触れるたび、この人は薔薇色の夢を見る天才だ、と思う。2018/01/23
橘
38
森茉莉さんの住む部屋についてを中心にまとめられたエッセイ、こちらもとても面白かったです。ガラスの瓶を始め、森茉莉さんの美意識で選ばれたものに囲まれた暮らし、他の人から見たらごちゃごちゃ…かもしれませんが、素敵な暮らしだと感じました。心根が贅沢なんだろうなと思います。これからは、たとえ不幸だなと感じられる事があっても、ほんとうの幸福を受け取れるような気がします。好きを求める、そんな生き方をしていいのだと思えました。2017/07/12