出版社内容情報
表題作のほか、文字禍/狐憑/幸福/名人伝などを収録。中国や南国を舞台に、格調高い名文で紡がれる短編集。高校国語教科書に準じた傍注付き。
中島 敦[ナカジマ アツシ]
内容説明
これまで高校国語教科書に掲載されたことのある短編を中心に編んだ、中島敦の作品集。教科書に準じた注と図版がついて、読みやすく分かりやすい。理解を深める名評論と、付録として「山月記」のもととなった中国の説話「人虎伝」も収録。
著者等紹介
中島敦[ナカジマアツシ]
1909‐1942年。東京四谷の漢学者の家系に生まれる。一高、東京帝大国文科にすすみ、横浜高女の教師となる。誠実な教師生活のかたわら創作につとめ、「狼疾記」「かめれおん日記」などを発表。昭和16年、教師を辞職、南洋庁書記官としてパラオ島に赴任したが持病の喘息をこじらせて帰国。ほとんど無名のうちに死去。死後、再評価された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
高校の教科書に掲載される短編集なだけあり、質が高いです。格調高い文体で描かれるその世界は迫るものがありました。中国が舞台なのと漢文調なので若干読みにくいですが面白かったです。2023/06/05
優希
44
高校の教科書に採用された作品の短編集です。どの作品も中国が舞台なので、著者は中国に造形が深いのだと思いました。2022/06/20
りつこ
33
漢文調の文章なのでとっつきにくいが「教科書で読む名作」ということでページ内に訳注が入るので存外読みやすかった。「山月記」虎になってもなお自分の詩を聞いてほしいと語る男に人間の欲の強さ、弱さを見せつけられる思い。恐ろしいような静謐な自然描写も素晴らしく胸に迫るものがある。「西遊記」の沙悟浄が語る「悟浄歎異」も面白かったが、前漢の軍人李陵や司馬遷を描いた「李陵」がとてもよかった。2020/03/06
ねこさん
29
どれも特筆すべき話とも思えず、人物が自認する非凡な才とそこから生じる我執、そして報われない承認欲求、嫉妬、焦燥を抱えて愁悲苦憂悩を持て余す知性、業の内に生き茫漠とした中国の風景に霞んでゆくあたりに、流浪のすえ若くして病に死んだ中島の魅力が滲み出ているのかも知れない。『名人伝』には実際に弓を引いているようなリアリティが感じられず、射も弓矢も忘却することが無作為の自然なのか呆けているのか判然とせず、滑稽でさえある。ただそれも含めて全体として憧れの感情、その愚かさも含めた寂しさが人を惹きつけているようにも思う。2018/09/26
yutaro sata
23
表題作もいいし、『牛人』などもなんともいえない良さがありますね。2022/06/11