出版社内容情報
鴎外見立ての着物、巴里の女の歩き方……江戸の粋と巴里の粋に彩られた森茉莉のお洒落。全集未収録作品を含む宝石箱アンソロジー。解説 黒柳徹子
森 茉莉[モリ マリ]
内容説明
鴎外見立ての独特の色みの帯や晴れ着、シベリア鉄道で届いたドイツ製の子供服、夫から贈られた結婚指輪に刻まれていた言葉やダイアモンドにエメラルド、巴里の香水や手袋のお店。もちろん、テレビに出てくる芸能人のファッションチェックの目も冴える。どんな日でもお金さえあれば、好きな洋服を買いに出かけたかった貧乏ファッションマニア森茉莉の目にも彩なるお洒落の宝石箱。
目次
第1章 幼い日のお洒落―茉莉の洋服・アンファンの洋服・キンドの洋服
第2章 巴里のお洒落
第3章 指輪・ネックレス・香水・嗜好品
第4章 森茉莉流お洒落術
第5章 ファッション・ドッキリ観察
第6章 お洒落切り抜き帖
著者等紹介
森茉莉[モリマリ]
1903‐87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父を憧憬する娘の感情を繊細な文体で描いた随筆集『父の帽子』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、50歳を過ぎて作家としてスタートした
早川茉莉[ハヤカワマリ]
ライター、編集者。『すみれノオト』発行人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青蓮
121
タモリさんや黒柳徹子さんの名前が出てきて、何だか親近感が。森茉莉は本当にお嬢様だったんだなぁというエピソードが満載。あの時代にドイツから服を取り寄せるなんて凄い贅沢。父の鴎外から溺愛されて育ったせいか、自惚れも強いけど、その反動としてコンプレックスも相当強かったと思う。でも彼女の美意識、美的センス、感性、審美眼は本物。お洒落のセンスが全くない私としては彼女のセンスには脱帽です。2017/04/17
こばまり
54
パッパが見立てた振袖に伯林から取り寄せた子供服。それらの鮮明な記憶を一つ一つ丁寧に読む。次第に脳の処理能力が追い付かなくなる。色彩の洪水。実際に見ることができたらどんなにうっとりするだろう。黒柳徹子氏による解説がこれまた素晴らしい。作家その人を表す貴重な証言だ。2017/01/15
ユメ
38
独逸から届いた雪のようなレースの夏服。三歳の帯解き祝いに着た、白と濃い紅に染め分けた燕柄の着物。森茉莉が幼い頃に身につけたうっとりするほど美しい服の数々は、それらを娘への溢れる愛情でもって誂えたパッパ鷗外の想い出と共に、幸福の円光の中に包まれている。失われし日々を思い返すことには哀愁もつきまとうが、その日々は間違いなく茉莉流お洒落の原点だ。彼女は鷗外から、真の贅沢というものを解する心を受け継いだのである。暮らしぶりが貧しくなっても心は豊かなままにお洒落を追求する茉莉を見ていると、心が浮き立つ。2017/12/22
橘
37
面白かったです。本物のお嬢様だった茉莉さんの、幼い頃からのお召し物の数々にうっとり。着物や洋服の描写が、その色彩や素材についても描かれていて素敵でした。茉莉さんの美意識で、時代の服装について書かれているところも興味深かったです。タモリさんや黒柳徹子さんも出てきたりして楽しかったです。黒柳徹子さんの後書きも素敵でした。2017/03/25
penguin-blue
24
小さい時に海外から届いた、舶来の洋服入った大きなボオル箱。開かれた描写に小さな茉莉と同じように読んでいるこちらもどきどきする。鴎外が愛娘のために選んだ美しい着物の柄。どちらも心に描くには恐らく自分の美意識が足りないのだろうけど、それが美しかったこと、そしてそれを着た時の高揚感が伝わってくる。後年、好きなようにおしゃれはできなくなった時期も書かれているけれど、お洒落や美しいものへのこだわりを彼女は持ち続けた。お洒落と言うのはブランドでも、値段でもないんだな、と改めて思う。黒柳さんの後書きも素敵。2017/02/03