出版社内容情報
マジックリアリスト、エリクソンの幻想的描写が次々に繰り広げられるあまりに魅力的な代表作。空間のよじれの向こうのに見えるもの。解説 谷崎由依
スティーヴ・エリクソン[エリクソン,スティーヴ]
島田 雅彦[シマダ マサヒコ]
内容説明
幻覚的描写が次々に繰り広げられる圧倒的に魅力的な小説。空間のよじれの向こうに、もう一つの“アメリカ”が立ち現れる。第一部は仮釈放されて図書館で働くケール、第二部は南米のジャングルで生まれ育ったキャサリン、第三部は「もうひとつの数」の発見から物語は始まる。そしてどことも知れない場所へ。T.ピンチョン絶賛の著者の、代表作!
著者等紹介
エリクソン,スティーヴ[エリクソン,スティーヴ] [Erickson,Steve]
1950年米国カリフォルニア州生まれ。小説家。マジックリアリズムとSFと純文学を越境する作家として知られる。1985年『彷徨う日々』でデビュー
島田雅彦[シマダマサヒコ]
1961年東京都生まれ、川崎育ち。著書に、『夢遊王国のための音楽』(野間文芸新人賞)、『彼岸先生』(泉鏡花文学賞)、『退廃姉妹』(伊藤整文学賞)、『カオスの娘』(芸術選奨文部科学大臣賞)ほか多数。芥川賞選考委員。法政大学国際文化学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sssakura
31
訳がわからないけれど面白くて、エリクソンの妄想にどっぷりハマってしまいました。キャサリンのように目が開いたままクルクル回っているような感じ。何も解決されないことは始めからわかっているけれど、先が気になって仕方ない。楽しい読書でした。2016/12/18
南雲吾朗
20
スティーヴ・エリクソン初読み。第一部からエリクソンの世界に引き込まれて行った。私は普段から、平行して何冊か他の作家の小説を読む癖があるのだが、エリクソンの小説を読んでいると、頭の切り替えが出来ず、他の作家の小説に迄影響が出てしまって、結果的に全ての小説の読む時間が凄く遅くなってしまった。凄くクセになる世界観だ。読んでる間は苦痛だったのに読後の感覚が忘れられず、中毒になりそう…。2017/11/15
踊る猫
18
高校時代に本書と出会ったことは幸か不幸か……何度目かになる今回の再読もエリクソンの生々しいグルーヴを堪能出来て幸福に感じられた。初期作品ならではのまだまだ粗削りなところが良い意味で言えば過激に感じられ、悪く言えばやや生煮えに感じられるのだけれど、結局私はこの島田氏に依る訳文で煌めくエリクソンに戻ってしまうのだろう。全編を満たす「水」の要素が様々なヴィジョンを脳裏に生み出し、その他にもこちらを眩惑させる光景がデヴィッド・リンチの作品のように揺らめく。今回の読書で島田氏の指摘する「他者」とはなにかに思い至った2016/11/23
ネムル
15
アメリカが、あるいは文明が死に瀕したいま、この作品好きで文庫復刊)した筑摩は英断だ。後の『Xのアーチ』のようにグレイト・ドヤ・アメリカン・ノベルせずに、荒削りのまま時空と描写が歪んでいるので、安心してトリップ出来る。良かった。2018/03/19
春ドーナツ
11
久しぶりにエリクソンさんの「何のこっちゃ」を味わおうと思う。90年代に初めて読んだ「黒い時計の旅」(白水社)の衝撃は未だに忘れてはいない。四半世紀。いろんな「何のこっちゃ」にこの身をさらして来た。余程のことがない限り「そうかそうか」と読み進めることができるはずだ。という訳でカフカズラビリンスを彷徨う。どこかに「やみくろ」が潜んでいそうだ。唐突に昔読んだ古川日出男さんの小説も「こんな感じだったな」という思いが脳裏をよぎる。読み終えた時、頭の中が熱く錯綜している。それは私が求めていたものだ。満足。2017/12/02