出版社内容情報
映画「男はつらいよ」の〈寅さん〉になる前の若き日の渥美清の姿を愛情こめて綴った人物伝。対談 渥美清と僕たち(小沢昭一)も収録。解説/中野翠
小林 信彦[コバヤシ ノブヒコ]
内容説明
1961年の夏、小さな雑誌の編集長をしながらテレビやラジオに出ていたぼくはNHKのドラマで全国区の人気者になりつつあった渥美清と初めて会った。芝居や映画をよく観る勉強家であり、見巧者の彼と喜劇マニアのぼくは親しく話すようになる。誰からも愛された、映画「男はつらいよ」の“寅さん”になる前の若き日の姿を愛情こめて綴る。対談渥美清と僕たち(小沢昭一)も収録。
目次
出会い
片肺飛行
上昇志向
アパートでの一夜
過去
喜劇人批評
最初の成功
ブームの中で
1963初夏
「おかしな奴」の失敗〔ほか〕
著者等紹介
小林信彦[コバヤシノブヒコ]
1932年生まれ。早稲田大学文学部英文学科卒業。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つねじろう
66
私の好きな渥美清はスクリーンに居ない。もちろん寅次郎も決して嫌いなわけじゃないしあの偉大なるワンパターンは至芸だ。でもマイ渥美清は人形佐七の慌て者の岡っ引きだったり泣いてたまるかの昭和のサラリーマンだったりする。棟方志功をモデルにしたドラマで「わだばゴッホになる」と津軽弁丸出しの彼も印象深い。この作者はそんな彼を一定の距離感で語る事で成功している。その距離は渥美清が誰とでもそうしてたのだと思う。そうしないと彼の天才故の鬱勃たるエネルギーをコントロールする事が出来なかったと思う。そんな超役者馬鹿の話しです。2017/10/29
こばまり
62
期待を遥かに超える面白さでむさぼるように読了。小林氏の記憶力と記録力にただただ感服。人物評のみならず、極上の昭和芸能史でありコメディ論でもある。「じゃ、今夜はこのへんでお開きということで」と夜毎、寅次郎を真似て自室へ引き上げるような父を持つ私には堪らない興味深いエピソードが多かった。2016/09/12
おさむ
42
若い頃から付き合ってきた小林信彦だからこそ書ける渥美清評伝は、読み応えがあります。松竹の舞台を支えたのが藤山寛美なら、映画を支えたのは渥美清だった。しかし、小林氏は徹底してクールな批評眼で渥美を描写する。これといったヒットのないコメディアンが、批評家には評判はいいが大ヒットのない山田洋次と組んでできたのが男はつらいよと、断じる。アウトローで情報魔で、神経質で諦観を抱えた複雑な人物だったことがその歯に衣着せない筆から浮かび上がる。どこかに「狂気」を抱えていた渥美さんを知ることができて、とても新鮮でした。2017/11/25
ぐうぐう
38
さもわかったようなことを書く評伝ほど警戒しなければならない。そのことを小林信彦ほど理解している作家はいないのではないか。本書を読んで、そのことを痛感する。まだ売れる前の、つまりは『男はつらいよ』以前の渥美清と濃密な交流を経験しながらも小林は、友人ではなかったとし、あくまで自身が見た渥美のみを描く風貌描写に徹するのだ。その徹底した姿勢が、本書の格調を高めている。何より、詳細な記録と冷静な小林の観察から浮かび上がる若き渥美の姿は、(つづく)2024/03/07
バトルランナ-
29
1984年くらいからだが、映画館で『男はつらいよ』シリーズを観れたことは、なんか自慢できることのような気がします!寅さんって画面に出てくるだけで、笑いが起きるし、諸外国のように上映中、合いの手を入れても良い映画でしたね。渥美清死亡によって、失ったものは文化と言うレベルな気がします。小林氏の著書は想定内の内容でしたが、昭和映画をいくつか借りることになりました。男はつらいよシリーズはテレビシリーズの2作目から最終回の前作品まで以外は観ちゃってるし、男はつらいよファンはつらいよ。5点満点で4点。2016/10/16