出版社内容情報
名著『戦中派不戦日記』の著者が、その生い立ちと青春を時代背景と共につづる。「太平洋戦争私観」「私と昭和」等、著者の原点がわかるエッセイ集。
内容説明
戦前・戦中に青春を過ごした山田風太郎は、太平洋戦争へ言及した文章が多く、当時の日記を刊行した『戦中派虫けら日記』『戦中派不戦日記』は名著と、評価も高い。この日記の時代を著者自ら振り返り、自身の生い立ちと時代背景に大きくある戦争に関する文章を集めたエッセイ集。「太平洋戦争私観」「ドキュメント・一九四五年五月」「二十歳の原点」「私と昭和」等、戦争を語りながら深刻ぶらず、飄然とした筆致に小説家山田風太郎の原点がうかがえる。
目次
1 私はこうして生まれた(中学生と映画;雨の国;故里と酒 ほか)
2 太平洋戦争私観(太平洋戦争、気ままな“軍談”;愚行の追試;気の遠くなる日本人の一流意識 ほか)
3 ドキュメント(ドキュメント・一九四五年五月;山田風太郎略年譜)
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年、兵庫県養父郡の医家に生まれる。『甲賀忍法帖』『くの一忍法帖』などで数々の“風太郎忍法”を生み出し忍法帖ブームをまきおこす。1997年第45回菊池寛賞を受賞。2001年、7月28日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
getsuki
7
タイトルの通り、昭和前期に青春時代を過ごした著者の姿が楽しめる一冊。太平洋戦争に関する記述も多く、山田風太郎の思想の一端を垣間見る事ができる。2016/02/26
おやぶたんぐ
5
前出の「戦中派不戦日記」副読本とでもいった趣き。明治以来の日本人が狂奔して行き着いた先が、あの否定すべき愚行であると喝破し、いわゆる過去の架空戦記を無意味と断ずる。一方で、昭和16年12月8日にハル・ノート受諾の聖断が下っていたならという「若しも小説」には意味を見出し、自らに響く再軍備の低奏音に悩む。…そんな一冊。2022/11/13
好古
4
初めて山田風太郎の著作に触れた。【以下引用、感想】「僕は数学はきらいだ。...この世は分業だから、数学はその人がやればいい。」(p106)自分もまったく同じ屁理屈を中学生の時思っていたのを思い出す。何なら今もそう思っている。「このままじゃもうたまらん!という苦悶がついに吐く時を得て、あの日の冬の碧空に深呼吸した」(p117)太平洋戦争開戦の知らせを受けた日本人の中にはこうして溜まりに溜まった鬱憤を晴らす時が来たという感傷を得た人も多かったと聞く。2024/07/29
法水
4
自らの生い立ちや戦争について書かれた文章を集めたエッセイ集。『同日同刻』番外篇とも言うべき「ドキュメント・一九四五年五月」は山風ならではの一篇。旧制中学生だった18歳の時に山田風太郎の筆名で初めて書かれた「中学生と映画」も収録。明治以来、「富国強兵」を掲げてきた日本がまず「強兵」に血道を上げ、終戦で鼻をへし折られてからは「富国」に邁進したはいいが、それだけでは一流になれないことを思い知る、一流になるには「文化」が必要であってそれがいちばんの難問題であることを痛感するであろうという指摘に首肯。2016/02/28
Katsuto Yoshinaga
4
『戦中派不戦日記』等を読んでいれば、さらに楽しめたのではという感がするが、残念ながら未読である。かわりに、先日『青春探偵団』を読んだばかりで、本書の『僕の危機一髪物語』をはじめ映画に関する件を書いた文章は楽しめた。山風先生にやんちゃな少年の印象を持っていなかったので、意外であり新鮮さを感じる。また、太平洋戦争に関する件も、氏の戦争に関する作品を読んでいないこともあるが、飄々とした筆致ながら右寄りな発言をあからさまにしているところも意外であった。稗史の史観で物語を紡ぐ山風先生の青春への思い入れなのだろうか。2016/01/17
-
- 和書
- 知識ゼロからの教会入門