出版社内容情報
孤独な天才芸術家ジェドは、世捨て人作家ウエルベックと出会い友情をはぐくむが、作家は何者かに惨殺される。最高傑作と名高いゴンクール賞受賞作。
内容説明
孤独な天才芸術家ジェドは、個展のカタログに原稿を頼もうと、有名作家ミシェル・ウエルベックに連絡を取る。世評に違わぬ世捨て人ぶりを示す作家にジェドは仄かな友情を覚え、肖像画を進呈するが、その数カ月後、作家は惨殺死体で見つかった―。作品を発表するたび世界中で物議を醸し、数々のスキャンダルを巻きおこしてきた鬼才ウエルベック。その最高傑作と名高いゴンクール賞受賞作。
著者等紹介
ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル] [Houellebecq,Michel]
1958年(56年とも)、フランス海外県レユニオン島生まれ。国立高等農業学校卒業。94年、小説第一作『闘争領域の拡大』で一躍注目を浴びる。2010年、『地図と領土』にてゴンクール賞を受賞。現在フランスで最もスキャンダラスな話題に包まれた作家である
野崎歓[ノザキカン]
1959年、新潟県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
403
ウエルベックの現在までの代表作の1つ。ゴンクール賞受賞。小説の主人公は現代美術家のジェドだが、ウエルベック本人が重要な役割で登場するという奇妙な構成。あろうことか、ウエルベックは殺人事件の犠牲者である。しかも、葬儀から墓石にいたるまであらかじめ用意されているようだ。他にも実名で現代フランスの著名人が多数登場する。ジェドにしてもウエルベックにしても生への執着が極めて薄いように感じられる。とりわけジェドのオルガに対する淡白さ、また自分の作品に対する淡白さは、この小説を特徴づけるが、どう捉えていいのか困惑する。2019/01/27
buchipanda3
108
芸術家のジェド・マルタンが見続けた景色。父親を、恋人を、社会を、そして社会の中の自分を。彼は言う、私は世界を説明したい。でも彼は人生を説明したかったのでは。芸術というツールで。滅びゆくもの、でも肯定するために。終焉とノスタルジー。地図も職業も変遷していく。価値観も。その先は自然への回帰か。著者の巧みな言い回しがクセなる。ぐいぐい読まされる、面白い。シニカルだが茶目っ気があり、理性的だが無垢、哲学的であり俗物的でもある。流れに身を任せるように生きたジェド、彼があるがままに写そうとしたものを改めて見つめた。2022/10/04
kana
84
読むこと自体が幸せで、本棚にとっておいて何度も読み返したい本。大成功を手中にしつつも孤独な生涯を送るジェドという芸術家が、いかに芸術家たりえたのかが鮮明に描き出されていきます。その過程でアートとは何かを、写真、建築、絵画、文学といった幅広い領域を俯瞰し、産業及び市場経済の発展や政治・国家の変遷までを並列的に扱いながら思索していくダイナミックさがたまらなく魅力的なのです。著者自らが作中に登場し、衝撃的な事件に見舞われたときは驚きましたが、登場人物一人一人が個性的に生き生きと描かれている点も素晴らしいです。2019/09/01
コットン
73
雑誌『BRUTUS』の危険な読書2020での紹介文では「どうやったら作品が売れるのか?を考え、それを実行して売れてしまったアーティストの物語です。」とあり、正しくそういう小説なのだが、違う側面から観ると写真家のち画家で最後はビデオ作家のartistジェドと現代フランスを代表するwriterウエルベックの邂逅と心理的影響の物語としても読める。特に著者が作中に登場し、かつショッキングな殺され方をする辺りも読みごたえがある。2020/01/14
ちゅんさん
52
初ウエルベック。一人の芸術家の一生を描いた普通にすごくいい小説でした。著者は過激な描写をするイメージがあったので驚いた。とはいえ自らを小説内で“世界的に有名な作家”として登場させているあたりウエルベックのクセの強さが垣間見える。とても面白いわけではないのにページを先に進ませる力を感じた。何がそんなによかったのかうまく説明出来ない。ウエルベックの他の作品も読んでみたくなった2023/04/26