出版社内容情報
マジックリアリズム作家の最新作、待望の訳し下ろし! 作家ザン夫妻はエチオピアの少女を養女にする。「小説内小説」と現実が絡む。推薦文=小野正嗣
内容説明
マジックリアリズム、SF、純文学を越境する作家の最新作、本邦初訳!『ロサンジェルス・タイムズ』紙2012年最優秀作品賞受賞。作家ザンと妻ヴィヴは、エチオピアの少女シバ(ゼマ)を養子にする。少女の母親を探す旅に出るヴィヴ。作家の自伝的体験、人種問題、アメリカの歴史が交錯し、「小説内小説」とポップ・ミュージックが絡む独自の世界が全開!
著者等紹介
エリクソン,スティーヴ[エリクソン,スティーヴ] [Erickson,Steve]
1950年米国カリフォルニア州生まれ。小説家。マジックリアリズムとSFと純文学を越境する作家として知られる。1985年『彷徨う日々』でデビュー
越川芳明[コシカワヨシアキ]
1952年千葉県生まれ。明治大学文学部教授(米文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
82
終末世界到来?養女シバの母親探しミステリ?理想主義・終息する熱狂・暗殺の国アメリカ?60,70年代ポップ・ミュージック?一見繋がりなく行きつ戻りつする主題と音。求めるものに近づけないもどかしさが増幅し緊密さを増す後半に来て漸くそのエリクソン独特の和声感を違和感なく感じ始めた。十二歳の息子パーカーの亀裂のような言葉、ザンに届かない携帯での呼びかけはリアルでも多くは幻のように映る。Saul Leiterの室内の湿気で曇り雨滴で濡れる窓を通して見る人物のシルエットのように。それでいて切々と悲しさが伝わってくる。2017/06/18
南雲吾朗
56
これ程までに人種間の問題がありながら、ひとつの国として成り立っているアメリカという国は凄いと思う。家族小説、歴史小説、政治小説、音楽小説。養子を貰う事による親子の問題。思春期の感情。政治的思想の違い。一人一人が違うように、微妙に感情の行き違いや考え方の違いを内包しつつ世界は回っている。あらゆる映像がいっぺんに映し出されるマルチヴィジョンの様な小説。最後の辺りのモーリーとシバ、モーリーとジャスミンの回想が切ない。非常に深い家族物語と感じた。スティーヴ・エリクソン、ハマりそうである。2019/02/06
藤月はな(灯れ松明の火)
36
初のエリクソン作品。ピンチョン同様、アメリカ近代史をテーマにしたポップでシリアスな家族小説。エチオピアからキリスト教の母とイスラム教徒の父を持つシバ(ゼマ)を引き取ったザン一家。しかし、人種で差別されることに皮膚感覚で分かったシバはザン一家に懐かない。それを気に病んだザンの妻は実母を探し、家族はバラバラに。ザンの息子の叫びはもっとも。しかし、シバの名前を知っていた家政婦は本当にゼマの母親だったのだろうか。そして生活費が高い英国から米国へエクソダスする場面でこの物語は神話構造だったのだと気づく体たらくでした2016/06/23
りー
35
読書メーター登録1,000冊目。スティーブ・エリクソンは好きだし1,000冊目という個人的に記念すべき一冊なんだけど、どうも合わなかった。貧しい作家の人生と作中作の主人公X氏と主人公に所縁のある過去の男のストーリーがメタ的に絡み合ったりもするのだけれど、特にそこを掘り下げるでもなく、人種の差異と家族の絆がアメリカ的思考で綴られてゆくのが主筋。エリクソンらしい幻視的な世界は薄められすぎていて、それを期待して読むとがっかりするかもしれないが、そのおかげかエリクソンとしては破格の読みやすさでもある。2015/11/02
chanvesa
33
『ゼロヴィル』『アムジニアスコープ』といった最近のエリクソンの小説は読んでないが、この『きみを夢みて』は本当に読みやすい。そしてオバマ大統領就任やリーマンショックの頃のアメリカの時代雰囲気と、人種や肌の色の問題といったアメリカの根深い問題が語られる。デヴィッド・ボウイと思われる人物も出てくる。しかしオバマの業績を否定し、ツイッターで世界を混乱させる大統領の時代になったし、デヴィッド・ボウイも死んだ。シバの指で首を切るポーズと生意気な言動は、私がある種の反感を覚えるアメリカのイメージを体現している。2017/08/14