内容説明
八〇歳を過ぎて女優を引退し、夫の希望で住み慣れた一軒家から海の見えるマンションへと引越した著者は、齢にさからわず、気楽に生きる時間に楽しみを見出す。女優時代のこと、下町気質の両親のこと、生まれ育った浅草の思い出などを織り交ぜながら「口に合うものを食べ、家人と語り合う幸せ」をしみじみとかみしめる日々を綴る。
目次
1(執着・みれん;年寄りはブラブラ;普通の暮らし;老いを思い知る;白髪いとし ほか)
2(わたしの昭和;海外派遣だけはやめて!;わたしの乱読時代;父のうしろ姿;食べもの雑記 ほか)
対談 老いる幸福(河合隼雄/沢村貞子)
著者等紹介
沢村貞子[サワムラサダコ]
1908‐1996。東京・浅草生まれ。府立第一高女卒、日本女子大学中退。在学中に新築地劇団に入団、治安維持法違反で獄中生活を送る。その後日活に入社し、1934年映画界にデビュー、小津安二郎監督作品などで名脇役として活躍する。一方で日々の暮らしを綴るエッセイも数多く発表、77年「私の浅草」で日本エッセイスト・クラブ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うちこ
8
いろいろあってたどり着いた境地なのでしょう。そのいろいろについて、ほんの少しだけ書かれていました。 昔は若い人に厳しいことを言っていたそうで、その頃に仕事で一緒になった後輩と年老いてから同じマンションで会うようになり、相手からめちゃくちゃビビられていたことを知った話が書かれていました。 外から見たらそう見えるかもしれないけれど、おだやかで品のいいおばあさんが自動的に出来上がったわけじゃないのよ、そんなことがあるわけないでしょうと、語りの立ち位置が安定しており、ほっこり読むエッセイではないのにマイルド。2025/04/21
Yumi Ozaki
7
日常の暮らしに楽しみを見つけていく貞子さんはやっぱりすてきな方だと思います。見習いたいな。2022/05/18
ふみりな
7
文章も軽快でかつ読みやすい。小説家が適当に書く下手なエッセーとは大違い。その中にも激動の時代を生き抜いた芯の強さを感じさせる。亡くなって四半世紀も経っていたとは。2021/06/25
のぼる
7
果たして、自分が85歳になった時、このように客観的視線を持ちつつも、主張のある分かりやすい文章が書けるだろうか。「美しく老いるなんてとんでもない」、深い言葉だ。外食ゼロ、手料理のみというのも、長生きの秘訣に違いない。逮捕されても思想を曲げなかった意志の強さも、筋の通った性格を表している。学ぶところの多い読書だった。長く読み継がれるべき一冊だと思う。2016/05/07
たいきち
6
図書館。80歳でも慣れ親しんだ住まいを変えるという気持ちの持ちよう。素敵です。ハッとさせられる重みのある言葉、今の時代でも通じる考え方、思わず唸ります。今も通じるということは、中々変わっていかないことが世の中にはあるということ。残念ではありますが、こうして先人たちが切り開いて生きてきたこと、ちゃんと受け取って忘れずに次に少しずつでも変わっていけるよう繋げていく生き方ができるかが大事だなと感じました。少しずつでも良い方に変わってることもあるんですもんね。2020/11/17