内容説明
自分で魚を釣り上げ、解剖を体験した子どもたちの絵が驚くほど変わった!表現に絵筆はいらない、必要なのは自然をよく見て学ぶ目だ。ピカソはなぜ天才か、脳で描くセザンヌと目で描くモネの表現の違い、子どもに抽象思考がきざす瞬間などをめぐり、ヒトがいかに絵を描くかを生物学的・解剖学的に解き明かす好著。
目次
絵筆のいらない絵画教室(子どもの絵が二日間で変わった)
なぜ絵筆がいらないのか(なぜ、絵筆のいらない絵画教室か;子どもはみんな天才;赤ちゃんが絵を描くとき ほか)
実践(絵筆のいらない絵画教室に挑戦―「魚」の絵を描く;「絵筆を使った絵画教室」にも挑戦してみよう―人物クロッキーを描く;絵をどのように評価すればいいのか―子どもの絵の、どこをチェックするか)
著者等紹介
布施英利[フセヒデト]
1960年生まれ。批評家。美術をはじめ、映像、建築、マンガ、文学、自然の美や人体などについての著作を発表している。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。同大学院博士課程(美術解剖学専攻)修了。学術博士。28歳の大学院生のときに最初の著作『脳の中の美術館』を出す。博士号取得後、東京大学医学部助手(文部教官)として、養老孟司教授のもとで、人体解剖学の研究生活を送った。出版した著作数は、約40冊。芸術と科学の交差する、美術の理論を研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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量甘
9
知識に頼った絵を描くのではなく、感じとった「何か」を描く。『自然』と向き合い『よく見る』こと。解剖学というと構えてしまうが、分かりやすく書かれていて参考になった。2016/10/18
yuri
7
著者は、養老孟司の研究室で人体解剖を学んだ美術批評家。最初は洗脳されたように左向きの硬直した魚の絵しか描けなかった小学生たちが、川で魚釣りをし、自らの手でそれを解剖するワークショップを通じて生き生きとした魚の絵が描けるようになっていく。「優れた画家は自然に学ぶ」とはダヴィンチの言葉だが、そういえば宮崎駿も「火を表現するには火に触れないとダメだ」と言っていたなぁ。。このワークショップの具体的なやり方から子供の絵への講評の仕方まで詳しいマニュアル付きなので、お子さんがいる方には特におすすめ。2017/12/30
M
4
絵画は描く本人の内面世界と外界との一致によって生まれるという。内面世界とは単なる物の見方だけでなく、内臓という生物学的要素も含めたものを指しており、大きく人間の脳と五感、「脳の視覚」と「目の視覚」の二つに分けられ、人間の身体の「動物性器官」と「植物性器官」の相互作用によって養われるという。当然、人間の身体も生命の歴史を振り返るとき、地球や宇宙との相互作用に適応する形で進化し、またその時代の社会環境に適応するための文化的進化の影響も受けている。人間がどのような絵画を描くのかには無限の可能性があるといえる。2019/12/17
たんたん
4
(要約)美術の極意は『自然』に学べ。こころは内臓にある。内臓は内なる自然であり、外の自然に触れた時に内なる世界が目覚める。2017/12/05
ホークス
4
「美術のための」解剖学を土台に美とは何かを追求しており、大変刺激的だった。物の名前を知る以前の子供の見る世界(言語以前の世界)こそが、絵画なのだとの指摘は、物事を新鮮な目で見る極意を含んでいる気がする。才能とは、何かの能力が欠如していることではないかとの話は、著者は「飛躍」と言っているが、「際立った能力」についての真理と思える。又、印象派とは、視覚だけの世界を極めた絵画であり、他の感覚とのミックスを前提とする一般的な絵画とは違うとの話には、眼からウロコが落ちた。他にも見どころの多い一冊。2014/08/13