出版社内容情報
怪奇小説の神髄は短篇にある。ジェイコブズ「失われた船」、エイクマン「列車」など古典的怪談から異色短篇まで18編を収めたアンソロジー。
内容説明
古典的怪談から異色短篇まで全18篇を収録。本物の恐怖と幻想を呈示する本格的怪奇小説アンソロジー。巻末に怪奇小説論考を収録。
著者等紹介
西崎憲[ニシザキケン]
1955年青森県生まれ。作家、翻訳家、アンソロジスト、音楽レーベル主宰。2002年、『世界の果ての庭』で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
91
「日本の夏は、やっぱり、怪談 洋編」参加がきっかけで再読。やはり、この短編集は面白い。「岩の引きだし」と「花嫁」は重婚の恐ろしさを描いているよう。「フローレンス・フラナリー」のクトゥルフ神話を思い出させる怪異、性悪女と屑男の寒々しい夫婦関係が嫌らしい。「七短剣の聖女」の姫に魅入られる中、嘗ての女性達の忠告を邪険にするドン・ファンは自業自得であり、その因果応報さに人が悪いが戦慄と共に快感を覚えてしまう。「陽気なる魂」はふわふわお頭の語り手がいきなり、現実的な破滅を迎えてしまうのが当時としても、今としても怖い2020/08/13
青蓮
86
読友さんの感想より。幻想譚、幽霊譚、怪奇譚等の系譜を集めた全18編からなる豪華なアンソロジー。普段、あんまり海外文学は読まないので、とても新鮮で、どの物語も楽しく読みました。「シャーロック・ホームズ」で有名なコナン・ドイルが怪奇小説「茶色い手」を書いていたのは本書を読んで初めて知りました。墓に魅了された少年を描く「墓を愛した少年」、衝撃のラストの「マーマレードの酒」、死んだ男が訪ねてくる「がらんどうの男」、奇妙な味わいのある「喉切り農場」など、お気に入りが沢山です。非常に収穫が多い本でした。2017/07/16
藤月はな(灯れ松明の火)
72
怖いというよりも切ないという話が多い印象です。特に「墓を愛した少年」と「妖精にさらわれた子供」にはいろいろな意味で泣かされました。「マーマレードの酒」は元祖『ミザリー』?「フローレンス・フラナリー」はクトルゥフ神話での『インマウスの影』の流れを汲んでいるような印象。「陽気な魂」は暈している真相が却って悍ましい。最強なのは「真ん中の引き出し」と「列車」。流石、最後の英国怪談作家、ウェイクフィールドだぜ!しかし、「喉切り農場」の訳は倉阪鬼一郎氏訳と比べると陽気な感じになっていて怖さが大分、薄まっているのは残念2014/03/07
HANA
57
怪奇小説アンソロジー。『怪奇小説の世紀』読んだはずなんだけど、ほぼ内容を忘れていたため新鮮な気持ちで読むことができた。内容はといえば……満足の一言。初めて読む「喉切り農場」や「旅行時計」の得体の知れない不気味さに身震いするもよし、「墓を愛した少年」「妖精にさらわれた子供」「失われた船」の叙情性に浸るもよし、「マーマレードの酒」「花嫁」のストレートな恐怖に怯えるもよし、とどの作品も様々な角度から楽しむ事が出来る。巻末の解説も行き届いているものの、これを読むと紹介されている研究書片っ端から読みたくなる危険が。2014/02/13
sin
52
なにげに古色蒼然とした物語を想像しておりましたが、豈図らんやキングのミザリーの原典かとも伺える作品や映画レイダースの一場面を彷彿とさせる作品、また本邦のジャパニーズホラーの如き“憑依”をテーマにした怪奇等、どの作品も意表を突くおもしろさで目新しく編者の力量に感嘆いたしました。巻末の“怪奇小説考”もなかなかの論主ぶりですが、なかでも“境界の書架”は楽しく読ませていただきました。2014/08/13