出版社内容情報
緊張感の中で常に新しさを追い求め続ける蜷川の若き日の決意と情熱がほとばしりでるエッセイ集。時を経ても古びない魅力あるエピソード満載。
内容説明
本書は、自伝的エッセイと自身の演劇に対する姿勢を書きつづった短編とから成る。タイトルは「客席に千人の青年がいるとしたら、彼らは千のナイフを持っているのだ」という本文から取られている。七十七歳になった今でもその言葉の呪縛から逃れられないと語る蜷川の、若き日の決意と情熱がほとばしりでるエッセイ集。本音を語る魅力あるエピソードは、時を経ても古びない。
目次
1章 演劇をめぐる自伝(役者から演出家へ(一九五五~一九六五)
騒乱の新宿時代(一九六六~一九七三)
千のナイフ(一九七四~一九八三) ほか)
2章 演劇という病(深夜の話―演出とは何か;砕けた鏡;風ももうすぐやむだろう ほか)
3章 千のまなざし(コミュニケーションの訓練;懐しく甘美な修羅場;ぼくは臆病なんだ ほか)
著者等紹介
蜷川幸雄[ニナガワユキオ]
1935年、埼玉県川口市生まれ。1969年、『真情あふるる軽薄さ』で演出家デビュー。1974年、『ロミオとジュリエット』で大劇場へ進出。以後日本を代表する演出家として世界各国で次々と作品を発表し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヨーイチ
13
告知。以下のコメントに本の感想は殆どアリマセン。著者はザックリ云うと、今一番の演出家。浅利慶太もいるけど、二人が比べられる事はあまり無く、多分比べる意味も無い。知ってる人は知ってるが、演劇に縁遠い人は多分知らない。有名になったのが70、80年代だから、当たり前かも知れない。世間から見ると芝居の演出家といえども裏方なのだろう。映画監督の方が作品の性質上まだ日持ちがするようだ。本書は演出家蜷川幸雄の数少ない著作。読んで分かったのは、そんなチャラチャラした物にホイホイ乗る人では無い、続く2015/04/17
RY
2
演出家としての自分は、観客の数だけの分のナイフを突きつけられている―世界的に活躍する演劇界の大家が自身の演劇観を語った作品。著者でもないのにあまり勝手なことは言えないが、かなり本音が出ている本ではないかと感じた。誇り高き孤高の人、こうした先人を持てて自分もどこか誇らしい。そんな気分にさせてくれた。2014/10/18
nisico
2
「蜷川さん、あなたは希望を語ることができますか?」 青年は再び言った。 「俺には語るべき希望なんてひとつもないし、俺は希望なんて語らないよ」 とぼくはいった。 「そうですか」 そういうと、青年は身を起こした。僕のわき腹は急に軽くなった。青年はテーブルの下に隠していた手を出した。その手にはジャックナイフが握られていた。 「ぼくはいつもあなたの芝居をみていました。あなたがいま、希望を語ったら、ぼくはあなたを刺すつもりでした。よかった――」2013/10/18
my
1
わなわなと奮起させられたふと目に入って、題名に惹かれて読むことにした。演劇のことは分からない。蜷川の秀でた部分がどこであるかも知らない。それでも自伝の熱にあてられた。過剰な意識で主義を貫く力強さが自分から失われていたのに気付いた。インタビューやエッセイの、年を取って経験を成功を積んでなお肉体にナイフをいくつも隠し持っているような毅然とした態度に憧れる。文庫というのが助かる。手元に置いてふにゃけた自分を叱りつけるために繰り返しページをめくりたい。2013/05/10
fumi
0
一劇団員から演出家となるまで、日本の芸能界と演劇界について、かかわってきた役者たちについて書いたエッセイ。 他業種でもハッと気づかされる箇所がいくつもあり、ラインを引きながら読んだ。平幹次郎、ショーケン、市川染五郎、岡本健一、松坂慶子、大地喜和子らのエピソードは非常に興味深かった。2017/12/07