出版社内容情報
過酷な戦争体験を喜劇的な視点で捉えた岡本喜八。創作の原点である戦争と映画への思いを軽妙な筆致で描いたエッセイ集。巻末インタビュー・庵野秀明。
内容説明
戦争映画や時代劇など多様な映画を撮った岡本喜八。深刻なテーマを軽快なテンポで描き、見る者を魅了した。だが、自身の青春期は戦争のただ中にあった。絶望的な軍隊生活を生き抜くため身に付けた喜劇志向がその作風に影響を与えた。また、映画同様、歯切れのよい文章でも知られた。本書は単行本未収録のなかから、戦争・映画などをテーマに編集した文庫オリジナル。
目次
第1部 8・15にコダワったりカマケたり(戦争映画と私;ネガからポジへ;わが映画人生―忘れ得ぬ人々 ほか)
第2部 活動屋殺すにゃ…(駆け出しの記;“新しい波”の作品を観て;笑うのは人間だけ ほか)
第3部 ヘソの曲がり角(ヘソの曲がり角;“黒”をめぐる奇妙な物語(山本迪夫)
解題(武井崇) ほか)
著者等紹介
岡本喜八[オカモトキハチ]
1924‐2005年。映画監督。鳥取県生まれ。明治大学専門部商科卒業後、東宝入社。1945年陸軍工兵学校に入隊。豊橋予備士官学校で終戦を迎える。東宝に復職。成瀬巳喜男、マキノ雅弘らの助監督を務め、1958年「結婚のすべて」でデビュー。リズム感あふれる軽快な画面作りで鮮烈なイメージを残した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もりくに
62
1924年生まれの映画監督・岡本喜八さんの繰り返し出てくる言葉、「自分の寿命はうまくいって23,下手すれば21」。青年前期は「空っ腹」、後期はそれに「死の恐怖」が加わった。上京以来好きになった「映画」を寿命までに一本でも多く見ること。そして、「見てこれだけ面白いのだから、一日でもよいから作り手側にまわっておきたい」と、1943年東宝に助監督として入社。タイトルの「マジメとフマジメの間」は、言い得て妙。監督の作品のスタイルで言えば、「マジメ」物の、「日本のいちばん長い日」そして「激動の昭和史 沖縄決戦」。→2021/11/19
ばんだねいっぺい
29
その思考的陰影の転換には、戦争により生命を脅かされた影響があり、それが作風にも反映されたんだなと理解した。結婚のなれそめにテレ性を感じ、可愛らしく感じた。段取りの大事さを説くのに深くうなづいた。入院記念なんて、岸田森は、粋な俳優さんだったんだな。喜劇でなくて、喜劇風と位置付ける厳しさを尊敬する。2019/10/27
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
23
映画を観ない私でも、何故だか好きな岡本喜八監督。何故か顔まで好きだ。この人の映画はわずかながら数本観た事がある。中学生の頃、筒井康隆と幕末にはまっていた私には、映画『ジャズ大名』のラストの狂乱が大好きだった。原作では九州の小藩だったのを、東海道の藩にしたのがさすが岡本喜八である(その話もこの本にある)。この文庫はオリジナル編集で、監督がいろんな雑誌に寄せた雑文をまとめたもの。戦争体験、先輩監督の思い出、自作について等それぞれ面白い。一番好きだったのは奥様との馴れ初め。庵野秀明インタビュー付き。2014/06/24
大泉宗一郎
10
悲惨なる戦争体験が生み出した”全てを喜劇にかえる目”は、彼の映画に活かされ、彼の映画を活かした。その目は『血と砂』で快活さと虚無感を同居させ、『日本のいちばん長い日』で終戦をエンターテインメントに仕上げさせ、『肉弾』で自身の戦争体験すらも喜劇にした。観る者をテンポの良さで畳みかけ、強烈な画面で圧倒し、喜劇の奔流に飲み込む。どんなに悲しい物語でも、悲しませるヒマを与えない。戦場で次々と仲間が倒れても、悲しむヒマがないように。マジメに撮ったら出来ない芸当。フマジメだったらやらない内容。中間だからちょうどいい。2018/05/17
ヨーイチ
10
映画ファンと言える程、見識があるわけではないが、岡本喜八は好きな監督だった。当たり前の話だが、映画監督は描写が上手い。更にこのエッセイ集は氏の映画を彷彿とさせる、テンポと笑と毒がある。職人には敬意を払う事にしているので、その点でも思ったとおりの人だったらしい。さり気なく語る修行時代の話も古き良き時代を彷彿とさせる。『若きウエテル悩み』は秀逸。こんな偉そうに見えない映画監督(文面上だが)も珍しい。大家に成っていない、と云うことか。コレって凄い事かも。2012/01/02