出版社内容情報
屋上があるととりあえずのぼってみたくなる。百貨店、病院、古書店、母校……広い視界の中で想いを紡ぐ不思議な味のエッセイ集。
内容説明
屋上を見つけると、とりあえずのぼってみたくなる。百貨店、病院、古書店、母校…広々とした視界の中で湧き出る小さな想いを紡ぎだす不思議な味のエッセイ集。
目次
人工芝に足あと
緑青の耳
愛猫病めり
フラレテシマエ
ナイターあります
お持ち帰りせず
夏の背なか
手帳より
延命第一
さよなら本館〔ほか〕
著者等紹介
石田千[イシダセン]
1968年、福島県生まれ。東京育ち。國學院大學文学部卒業。2001年「大踏切書店のこと」で第1回古本小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なるみ(旧Narumi)
23
淡々とした筆致のエッセイでした。2019/01/11
あんこ
21
マニュアルカメラのファインダーを覗いて見たゆったりした景色を思い出しました。屋上が持つ特有の気だるさや安心感がぽつりぽつりと伝わってくる。こんな人見たことあるなあ、という不思議な既視感。懐かしくて、立ち入り禁止の屋上の鍵をピンで開けて忍び込んでいた高校時代を思い出しました。2014/03/20
S.Mori
13
石田さんの文章が好きです。他に類を見ない個性的な文章で、石田さんの感性を通してみるとありふれたものでも新鮮に感じることがあります。この本は東京のビルの屋上を描いた作品です。屋上から見る東京の風景が詩的に描き出されています。現代的でありながら、古いところも残っている東京の街の姿が鮮やかに書かれています。食べ物の描写も巧みで、とんかつのような普通の食べものも石田さんのエッセイで読むと非常に美味しそうに感じます。2020/01/28
ちいさな図書館
11
屋上に登りたい。遮るもののない空間で空を見上げたい。普段はどちらかといえば部屋の隅にうずくまるほうが好きな私にもそう思わせる。とはいえ千さんの視線は大空や遠くを眺めているのではなく、すれ違うひとたちや哀愁漂う遊具たちなどを見つめる。その細やかな視線を追っていると、自分もそこにいたような気持ちになっていくから不思議だ。次の晴天には、屋上に登ってみよう。ぼんやりと、自分の気持ちだけを感じてみたい。2014/09/30
つーさま
9
屋上は普段見えないものを、出会えないものを見せてくれる不思議な場所だ。のぼってみなければ、どこからともなく吹いてくる風がこんなに気持ちいいことも、その風が食べ物の匂いや人のぬくもりを運んでくることも知らないままでいたはずだ。石田さんの文章は一文一文が非常に短くこぎみいいだけに、一度読み始めると止まらなくなる。今日みたいな暑い日に、屋上気分でビール片手に枝豆でもつまみながら読むのにはぴったしな一冊かもしれない。2013/08/15