出版社内容情報
死んだ人に「とりつくしま係」が言う。モノになってこの世に戻れますよ。妻は夫のカップに弟子は先生の扇子になった。連作短篇集。
内容説明
死んだあなたに、「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。そうして母は息子のロージンバッグに、娘は母の補聴器に、夫は妻の日記になった…。すでに失われた人生が凝縮してフラッシュバックのように現れ、切なさと温かさと哀しみ、そして少しのおかしみが滲み出る、珠玉の短篇小説集。
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
1963年生まれ。歌人・作家。06年に『長崎くんの指』(のちに文庫『水銀灯が消えるまで』)で小説デビューし、以後、多数の小説作品、エッセイ集などを発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
723
歌人の東直子さんによる掌編小説集。番外篇を含めて全部で11篇からなる。いずれも亡くなったばかりの死者による一人称語り。来世の入り口に居る「とりつくしま係」が、この世の物体にとりつく手助けをしてくれるというファンタジックにも大胆な発想。幕開け第1話の「ロージン」なんかはぐっとくる。もっとも、後は基本的に同じ展開なので、やや慣れてきてしまうのだが。それでも後半の「日記」のせつなさは格別のもの。最終的には死者の諦念に収斂してゆくのだが、そのことは同時にこの世の誰かへの執着を哀切に語るものでもあるだろう。2021/07/15
yoshida
390
想いを残して亡くなった方が「モノ」に宿る短編集。マグカップ、日記帳、マッサージチェア、ロージン、白檀の扇子等。共通する想いは大切な人の近くにいたい。想いを残さずに生きることが出来れば最善である。しかし、なかなかそんな生き方は出来ないのではないだろうか。この作品を通じて伝わる大切な人への優しさ。そして残された人達のそれぞれの想い。残された人達の想いが少しずつ変わってゆく。大切な人の死を受け入れつつ、胸に残しながらも、新しい明日を歩き出す。その想いの移ろいが、切なく優しい感動を呼ぶ。素晴らしい作品に出逢えた。2017/12/16
射手座の天使あきちゃん
358
あとに心は残れども、残しちゃならぬこの身体 そんな切ない思いの丈を、願掛け紙書き息吹きかけて この世に届けよ「とりつくしま」 読むほどに切なさが溢れる短編集でした。 番外編の「びわの樹の下の娘」ちょぴり怖かった! <(^_^;2016/11/30
しんごろ
341
死後、何かの物にとりつくとしたら…という話。自分なら何かなと思いながら読んでしまうね。もちろん、人それぞれがとりつく物は違うけど、やっぱり大切にしたい人の近くに居たくなるね。自分もきっとそうだろうな。しみじみあり、優しさあり、切なさあり、可愛そうなのや、時にはおいおいとツッコミたいものと、いろいろありましたが、とりつく物を考える前に、今を大切にして、力の限り生きたいね。読み終えた後はそう思わされた。どの章も良かった。そして、どの章もラスト一文に納得させられる。2020/09/26
やま
337
とりつくしま 2017.11発行。大活字本 埼玉福祉会。 なお、本の登録は、「とりつくしま (ちくま文庫) 2011.05発行」で行います。 ロージン、トリケラトプス、青いの、白檀、名前、ささやき、日記、マッサージ、くちびる、レンズ、番外編・びわの樹の下の娘の短編11話。 死んだ人が、生前の人の持ち物にとりついて、生前の想いを語る物語です。 読みやすい、読んでいると詩を読んでいるような気がします。 この本は、いいです。 母の想い、息子の想い、初恋を貫いた想い…などが胸にしみて来ます。2020/04/07




