出版社内容情報
奉天会戦からノモンハン事件に至る34年間、日本は内発的な改革を試みたが失敗し、敗戦につながることになった。自己改革はなぜ失敗したのだろうか。
内容説明
1905年の奉天会戦から1939年のノモンハン事件に至る34年間は、国家改造計画から共産主義思想まで、日本が内発的な改革に呻吟した時代だった。しかし、結局、軍部の専制を防げず、未曾有の敗戦という結末を迎えることになる。日本の自己改革はなぜ失敗したのだろうか。官僚から政治家となった著者が自らの体験を振り返り、近代史との様々な対話の中から、その原因を追究する。
目次
第1章 二〇世紀前半の日本への旅の準備
第2章 奉天からノモンハンへ
第3章 現在への視座
あとがき―旅を終えて
日本軍の情報マネジメント、そして「現在」
原敬―ジェネラリストの巨星
「生真面目な昭和」から何を学ぶか(対談/福田和也)
日露戦争後の日本、バブル後のニッポン(鼎談/秦郁彦・寺島実郎)
著者等紹介
齋藤健[サイトウケン]
1959年生まれ。東京大学経済学部を卒業し、通商産業省(現・経済産業省)に入る。エネルギー行政や中小企業行政、経済政策や行政改革など幅広く担当。また、91年には、ハーバード大学大学院で修士号を取得。94年からは日米交渉に携わり、通商大臣秘書官や埼玉県副知事(出向)を歴任。その後政界に身を転じ、現在は自民党衆議院議員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
88
恥ずかしながら地元千葉県選出の衆議院議員なのに著者のお名前は存じ上げてなかった。1959年生まれ。本書を著された2002年時点では40代の通産官僚。約10年後、この増補文庫版を出すが、その間に政界に転じ06年衆院補選落選、浪人生活を経て09年、衆議院議員に当選。環境相などを歴任の後、現在法相を務めている。さて、本書の中身の方だが、日露戦争の輝かしい勝利から第二次大戦の惨めな敗北、戦後高度成長からバブル崩壊、「失われた10年」へと、20世紀の日本は高揚と挫折の間を二度大きく波打った。1905年、奉天会戦で⇒2023/08/23
おさむ
48
元経産官僚で現農林副大臣の斎藤氏が、官僚時代に書いた新書の増補版文庫。ある学者がお薦めしていたので読んでみた。政治家の本って本当に面白くない本が多いけど、なかなかのものでした。第二次大戦敗戦の詳細な史実を分析した上で独自の敗因をまとめています。ゼネラリストの不在、組織の改革能力の欠如、道徳律の喪失、正確な戦史の不存在だったと結論付けています。そして、同じことが今も繰り返されている、とも。近現代史好きで司馬遼太郎に傾倒してるのが、文章からひしひしと伝わって好感が持てます(笑)。2017/08/18
kawa
43
戦前日本のピークを日露戦勝利(1905年)と捉え、そこからノモンハン事件(1939年)という「転落」までの理由を、指導者層の変質と道徳的規律の喪失と分析・詳説する書。曰くその原因は、国のリーダーが維新から近代国家建設までの動乱の時代を引っ張った明治の元勲に代表されるジェネラリストから、日露戦以降は陸大等で教育を受けた軍事スペシャリストに取って代わったことであるとする。(コメントへ)2021/08/20
TheWho
22
安倍改造内閣で、当選3回にも関わらず農林水産大臣として初入閣を果たした齋藤健が、日露戦争からノモンハン事件、そして敗戦に至った歴史の推移を政官組織の変遷の功罪と云うキーワードで綴った歴史評論。著者が通産官僚時代の2002年に刊行された本著は、歴史の教訓としてのエッセンスが満載で、戦前の戦史や政治史から現代に繋がる歴史の変遷を組織論から解釈する良書とも思える。しかし多少司馬史観への偏りが垣間見えたのは残念だった。願わくば政治家としてチャーチル程の大局的歴史観の筆力と行動力を今後期待したい。2017/09/19
koji
21
偶々安部派5人衆失脚後の内閣改造で西村さんの後継となった著者(齋藤健さん)のプロフィールを読んでいた時、本書の執筆を知りました。なかなか刺激的なタイトルへの興味と、同世代という親近感から、早速手に取りました。現代の日本政治家に期待するところが少ないのですが、読んで「近しさ」を感じた2人目の同世代政治家になりました(1人目は松井孝治さん)。①団塊と新人類の谷間の世代としての使命感、②ジェネラリストとしての振る舞いの大切さ、③組織30年弱体化説など大いに共感します。最後に最も共感した点をコメント欄に記載します2024/01/13