内容説明
世界の美酒・銘酒を友として三十余年、著者は常に酒と共にあった。なぜか。「酒をやめたら…もうひとつの健康を損ってしまうのだと思わないわけにはいかない」からである。酒場で起こった出来事、出会った人々を想い起こし、世態風俗の中に垣間見える、やむにやまれぬ人生の真実を優しく解き明かす。全113篇に、卓抜して飄逸な山藤章二さんのイラストが付く。
目次
はじめての酒
甲府の葡萄酒
飯盒の酒
暗がりの酒
空襲の翌朝
お流れ頂戴
お燗番
酒亭たにし
最後の高見順さん
天に昇る電車〔ほか〕
著者等紹介
山口瞳[ヤマグチヒトミ]
1926‐95年。東京生まれ。麻布中学から第一早稲田高等学院に入学するが自然退学。戦後、働きながら國學院大學を卒業する。1958年、サントリーに入社し、「洋酒天国」の編集者として活躍する。63年『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞、79年『血族』で菊池寛賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
62
昭和48年に上梓された本である。どんな世相であったか。田中角栄なるカリスマ政治家がさらなる高度経済成長へ向けていいことも悪いこともやってた時代。国民が未来に夢と希望を持ってた時代。古き良き昭和時代だ。この本、そんな古き良き昭和時代の酒飲みエッセイである。飲み方にも酔い方にも流儀がある。その流儀を教えてくれている本。私も昭和と言うバンカラな時代に若さと体力に任せて浴びるほど酒を飲んだ。量は減ったが今でも飲んだくれている。さて、酒飲みの流儀は守れているのであろうか、、、、2018/03/24
ざるこ
47
「夕刊フジ」に掲載されたコラムを纏めた作品。戦前~戦後を生きた筆者だけど重苦しい話はまず出てこない。何度声を上げて笑ったことか。類はなんとやらで破天荒な面々がたくさん登場する。4頁イラスト入りで1話。またこのセリフ入りのイラストが皮肉やパンチが利いてて味があっていい!ただただ酒が好き。ウィスキーを水で割るなど悪しき風習と憤激し銀座の酒場が社用接待の場になったと嘆く。言いたい放題で読んでてまったく気持ちいい。大らかで豪快で潔い。酒は我慢する方が健康を損ねると思ってらっしゃる。酒好きに超絶オススメしたい作品。2019/09/10
いちろく
46
夕刊フジに掲載された内容を纏めたお酒に関係するエッセイ。戦前、小学生の頃に先生から気つけ薬として日本酒を飲まされたという仰天エピソードから、戦後の銀座や新宿等の飲み屋の変遷の話など、今はもう失われてしまった情景である昭和40年代の頃までのエピソードの数々。王貞治さんや大橋巨泉さんをはじめとする有名人との交友エピソードも凄かった。ただね、この本の一番の魅力は読み始めるとお酒が飲みたくなる注意本である事。普段家飲みをしない私が少しずつ読み進めた数週間の間、飲みたくなって飲んでしまったよ。(;一_一)2017/09/23
ケー
22
直木賞作家の飲酒エッセイ。サントリーに勤務経験もあるためウイスキーネタ多め。もちろん自分もサントリーハイボールを飲みながら読んだ。どの話も面白いけれど、特にハイボールはどこも同じなんてもんじゃない、作り方によって全然味が違うんだとの主張には全力で同意。さすがわかってらっしゃる!そうなんですよ全然違うんですよ!特にさ、あそこのハイボールは他とは比べものにならないくらい美味い‥‥ちょっと熱が入ってしまいました、スミマセン。とにかく、お酒好きなら読んで損はしません。「酒のない国」、「体にわるい」は必読。2017/08/12
奏市
21
50年程前の酒に関するエッセイ。大概は飲みながら読んだ。サントリーで会社員された経歴持つ直木賞作家が著者。昔の酒呑みは良く飲んで良く働いたんだなと感じ入る。酒癖は良くないと認め喧嘩も数々やったと白状するのが気持ちいい。川端康成、吉行淳之助、阿川弘之、伊丹十三などの話題が出てきて興味深く読んだ。江國香織さんのお父上も出てきた。鹿児島の篇が面白かった。ホステスの会話について「浮気とPTAとが、不自然な感じでなく同列に扱われるのが、いかにも奇異に思われた。」山藤章二さんのイラストが各篇ついてあり味わいあった。2021/04/19