出版社内容情報
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内容説明
時は19世紀後半、大英帝国は黄金時代を享受していた。ところが英領インドを目指すロシアの南下に伴って「グレート・ゲーム」(闇戦争)が勃発し、激しい謀報活動が展開される。冒険心に富んだインド生まれのイギリス少年キムは、そのための格好の人材だった。資源争奪をめぐるイギリスとロシアの角逐を背景として、インドの豊かな自然を舞台に展開される冒険小説の傑作。
著者等紹介
キプリング,ラドヤード[キプリング,ラドヤード][Kipling,Rudyard]
1865‐1936。ボンベイ生まれ。英国で教育を受けたあとインドに戻り、新聞記者として活躍する。1894年「ジャングル・ブック」、1901年「少年キム」を発表。1907年には英国人初で史上最年少のノーベル文学賞を受賞した
斎藤兆史[サイトウヨシフミ]
1958年生まれ。現在、東京大学大学院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
109
(イングランド系ではない)アイルランド系の白人少年がインドで(ヒンズーではない)ラマ教の僧の弟子となって修行の旅に出る、という設定が意表を衝いて興味深かった。ラマ僧の語る教えは釈迦牟尼仏の教えであり、「矢の聖河」を目指すという。なにやら不思議である。旅の途中であらゆる階層のあらゆる人々と出会い冒険を重ねる。インドを故郷とするキップリングでしか書けない世界である。彼は帝国主義の落とし児と言われているが、どうでもいいような気がする。物語の舞台がたまたま帝国主義治下のインドだったということだと思う。G1000。2023/12/05
ケイ
108
インドで生まれ、両親と死に別れたキムは、インドの下町社会で逞しく暮らす。ある日、巡礼の旅をしているチベットの老いた高僧ラマと出会い、心のきれいなラマの世間知らずな危なかっしさを見ていられないキムは、ラマについて旅に出る。二人の最初の旅はわずか3日間だ。その間に二人の間に築かれた信頼感と愛は尊い。前半で、学校に行くことに決めたキムに別れを告げるために校門で待っていたラマの姿が残像のように頭にある。あらゆる宗教、黒人以外の人種を登場させ、人と暮らしを描いたこの話に、帝国主義の影など私は微塵も感じない。2015/06/12
Ryuko
24
キム・フィルビーの名前がとられた小説ということでずっと読んでみたかった作品。イギリス植民地時代のインドを舞台に孤児の英国人少年キムは、チベットから来た僧ラマと聖河を探す旅に出る。その一方で闇戦争(グレート・ゲーム)と言われる諜報活動にも携わるキムは、はしっこい少年だ。インドを旅し、時に学校に入ったり経験を積んで少年が成長していく物語。キム・フィルビーのイメージから諜報活動色が強いと勝手に想像していたのだけれど、成長物語色がとても強い作品だった。2019/02/18
NAO
22
インドで生まれ、イギリス人でありながら土地の言葉を巧みに操り、路地を駆け回るキム。キムの、自分は何者なのかを探求する思いは、インドで育ったキプリングの悩みそのものだったのだろう。キムは、ラマ僧と出会い聖河探求の旅に出る一方で、英露の諜報戦に参加し、大活躍する。この作品は帝国主義的だともいわれているようだが、多様な人種、民族、宗教を超越して、泥臭い人間の生きざまを活き活きと描いているということをもっと評価すべきだと思う。冒険物語としても、とてもおもしろかった。2015/06/23
糸車
18
なんの教育も受けず、愛情も受けず、けれど逞しく生きている少年キムとラマ僧の出会い。崇高なお師匠さまの世間知らずまでの欲のなさに、キムが感じたものはいっそ庇護欲なのでは。だってキムのお世話がなかったらお師匠さまは絶対行き倒れていたと思う!キムにとってお師匠さまは絶対裏切られない確かな対象でもあった。人には生きていくうえでそういう「確かな存在」が必要なのだと思う。分厚いハードカバーを図書館で二度も借りて、飽きることなく読み返した。キムの冒険、ドキドキしながら楽しみました。そして、やっぱり涙。さすがの名作です。2013/04/18