出版社内容情報
内容は後日登録
内容説明
17歳の平凡な少女キャサリンは、リゾート地バースで恋に落ち、由緒あるお屋敷に招待されて有頂天。古めかしいお屋敷で、愛読中のゴシック小説に出てくるようなホラー体験ができる、と大喜びでノーサンガー・アビーに出かける。ところが、小説の読みすぎでキャサリンの妄想はとんでもない方向に…。オースティン初期の辛口ラブコメディー。定評ある読みやすい新訳で初の文庫化。
著者等紹介
オースティン,ジェイン[オースティン,ジェイン][Austen,Jane]
1775‐1817。イギリスの小説家。おもに結婚話を題材とした、平凡な日常生活のドラマを皮肉とユーモアをもって描き、完璧な芸術へ高めたと言われる
中野康司[ナカノコウジ]
1946年神奈川県生まれ。青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
146
舞踏会で知り合った博識なヘンリーと恋に落ちたキャサリンは彼の実家に招待される。20代前半で執筆された実質的処女作であり、多くの文学的引喩、溌剌とした機知とユーモアからも著者の豊かな教養や知性が窺える。財産や結婚が絡んだ周囲の思惑に対するヒロインの純粋さと思い込みの強さが話を牽引しており、喜劇的要素は抜きん出て高い。ノーサンガーアビーで旺盛に好奇心と想像を広げるヒロインからは著者のゴシック小説好きが伝わってくるし、ヘンリーとジョンの対比に文学を絡める点も露骨。「失う心がない」イザベラへ皮肉も毒が効いている。2017/07/24
やいっち
80
「17歳の平凡な少女キャサリンは、リゾート地バースで恋に落ち、由緒あるお屋敷に招待されて有頂天。古めかしいお屋敷で、愛読中のゴシック小説に出てくるようなホラー体験ができる、と大喜びでノーサンガー・アビーに出かける。ところが……」といった内容で、オースティンの初期作品。2022/03/05
紅はこべ
71
私は作中でヘンリーがゴシック小説の面白さについて熱烈に語るシーンが好き。『源氏物語』の「螢」の巻で、光源氏が玉鬘相手に物語の価値について語るシーンを思い出す。小説、物語、フィクションの面白さ、価値を熟知しているからこそ、現実を見つめる目が持てるのだ。現実と架空世界を混同する人は、物語を心から味わったことがない人なのだと思う。
HANA
68
十九世紀初頭の恋愛小説。小説好きの少女が古い館に招かれて…。ゴシック小説のパロディと聞き興味が湧いて読み始めたのであるが、恋愛小説はやはり趣味に合わずきつい。恋愛にしても当時の風潮で家と財産が先に立つのとそれの駆け引きが中心となっている部分は、興味深いけどやっぱり会話がきついなあ。ゴシック小説への言及とノーサンガ・アビーについてのパロディ部分はベタながら面白く読めたけど、それも中盤一部分だけだったし。ゴシック小説の研究書で言及されていたので読んだけど、やはり自分に恋愛小説は向かないと分かった一冊でした。2020/10/13
yumiko
66
「十七歳の娘の例に漏れず、無知で無教養だった」と書かれてしまうヒロイン(^^;;夢見がちで世間知らずなところが昔の私に似ているような…流石にもう少し人を見る目はあったけど。この時代の英国流マナーと建前に縛られた会話に辟易するも、皮肉たっぷりなオースティンの筆が面白く読み進む。時代も文化も違うのに、こういう人いる!と感じる人物造形、誰も彼も彼女の辛口な描写から逃れられない。滑稽で愚かな人々の輪舞の中、夢見る女子のシンデレラストーリーは一先ず終了。でも人生はまだまだこれからよ〜とおばさんは意地悪くほくそ笑む。2017/04/11