内容説明
座談の名手でもあった開高健が、自ら選んだ強烈な個性の持ち主たちと相対する。一対一の対話や作品論、人物描写を混和して、遠近のある肖像として描き出した「文章による肖像画集」。開高健が、第一線の作家、詩人、画家、学者と真剣勝負を繰り広げる。戦後人物ノンフィクションの金字塔。
目次
行動する怠惰―広津和郎
自由人の条件―きだみのる
マクロの世界へ―大岡昇平
誰を方舟に残すか―武田泰淳
不穏な漂泊者―金子光晴
カゲロウから牙国家へ―今西錦司
手と足の貴種流離―深沢七郎
流亡と篭城―島尾敏雄
惨禍と優雅―古沢岩美
“思い屈した”―井伏鱒二
絶対的自由と手と―石川淳
地図のない旅人―田村隆一
著者等紹介
開高健[カイコウタケシ]
1930年大阪に生まれる。大阪市立大を卒業後、洋酒会社宣伝部で時代の動向を的確にとらえた数々のコピーをつくる。かたわら創作を始め、「パニック」で注目を浴び、「裸の王様」で芥川賞受賞。ベトナムの戦場や、中国、東欧を精力的にルポ、行動する作家として知られた。1989年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
27
知っている作家だと、頭に入ってきてイメージしやすかった。大岡昇平は、レイテ戦記で有名だが、そこから組織的行動が崩れる敗走という状態を調べるマニアになり、夫婦よりも長い付き合いになっている。今西のボスが最初の知識人という分析にも深く共感。深沢七郎は初めて知ったが、高い文化的生活を農村で営むのはあこがれる。2021/11/16
奏市
18
開高健と文豪、画家らとの対談集。面白かったが、出てくる各氏の思想の奥深さ、崇高さに触れるとのほほんと生きている自分が恥ずかしく読みながら始終胃がひりついていた。各篇で対談内容よりも著者の対談相手への人物評の方が文章量多い。『富士日記』に出てくる武田泰淳、大岡昇平について知れて良かった。大岡昇平「戦争にいかなかったら何も書かなかったろう」。開高健「戦争は双頭の鷲だ。悲惨と豊穣の双頭の鷲だ」。佐賀出身の古沢岩美の絵を見てみたい。画伯曰く、西洋の有名な女性ヌードの眼は、どれも画家と事を成した後の眼であると。2022/01/23
オカピー
7
知らない作家さんもいたので、その方の作品も読んでみようと思います。詩人、画家、学者、同業の作家さん、沢山の方と対談されています。皆さん、個性強いですね。それに切り込んだり、自然体で近づいたり、作戦を考えてみたり・・・いろいろのアプローチの仕方もいいですね。2023/11/27
nanaco-bookworm
5
惚れている作家佐野真一氏が以前ブックレビューでこの本を絶賛していらっしゃった。あまり読んだことのないような言い回しの開高健氏の文章。ひとつひとつ馴れ合いや惰性で読めなかった。脳みそのいつも使わない部分を使って読む心地よい感覚があった。個性的な作家や画家・詩人相手の対談集。男気のながれるいい対談集だった。開高健に対するイメージが変わった。2011/08/31
akios
5
開高氏自身が躁鬱の狭間でいったりきたりしているのも面白いし、きだみのるとかなんだかわけがわからないスゴい人たちと交わす言葉がまた、いちいち含蓄ありすぎ。個人的にはだいすきな金子光晴、田村隆一あたりのとこがすき。石川淳はイメージとちょっと違って、それも生々しくて楽しい。2011/03/26