ちくま文庫
曹操―矛を横たえて詩を賦す

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 294p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480425744
  • NDC分類 289.2
  • Cコード C0122

内容説明

「三国志演義」ではもっぱら敵役扱いの曹操だが、実際は武人、政治家、詩人として、中国の歴史の流れを大きく変えた傑出した人物だった。宦官の貰い子の息子として、そのまま世塵に埋もれていったはずのひとりの青年が、後漢末の群雄割拠の時代、自らの才能だけを頼りにのし上がり、ついには一国の王者となるまでを、数々のエピソードを交えながら豊かに描き出す。

目次

第1章 非常の人、超世の傑
第2章 蒼天已に死す―時代とおいたち
第3章 外に武功を定む―武人としての曹操
第4章 内に文学を興す―政治家としての曹操
第5章 矛を横たえて詩を賦す―詩人としての曹操
第6章 壮心已まず―英雄の死と死後の英雄

著者等紹介

川合康三[カワイコウゾウ]
1948年浜松市生まれ。京都大学文学部卒、同大学院博士課程修了。京大助手、東北大助教授を経て、京都大学文学研究科教授。専門は中国古典文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

asukaclaesnagatosuki

5
保刈瑞穂先生の『プルースト 読書の喜び』を読む合間に、なんとなく読み始めたら、読み易く読み手をひき込む文章で二日で読了。川合先生30代の著作だそうで、生き生きした記述から曹操の生き生きした人となりに著者が共感しているのが伝わってくるからだろうか。非常の人としての曹操のスケールの大きさは現代の読者たる自分には想像もつかないけれど、鎧の下に人間的なさまざまな感情が生動していることを曹操の文章や詩、後代が伝える逸話などを通して伝えてくれる。曹操の同時代のさまざまな人物も魅了された。曹操の子の曹植が心に残った。2012/02/16

テツ

3
『治世の能臣、乱世の奸雄』 政治家としての強引な手法と勢力拡大のための戦争ばかりクローズアップされ三国志のフィクションでは悪役にされがちな曹操だけれど、詩を愛する心や身分や地位にとらわれず能力のある人間を抜擢する組織運営手腕、自らが死ぬときも残された者たち、魏の将兵たちを戒め豪奢な葬儀を慎むようにと遺言を残す凄まじく現実的な側面。単に悪人と称することはできない、まさに破格の英雄。自分の人生を絞り尽くし使い切った生き方に憧れる。2014/09/02

ソルト佐藤

3
曹操自身の文章や詩にて、彼の人生を追いかける。そこに現れたの正史にあるようなしかつめらしい姿ではなく、時には弱音があり、時にはほめられてうれしそうにする人間らしい人間。人間はいつか死なねばならない。けれど、諦念にならず、だからこそ、精一杯生きるべきだという人間肯定の考え方の曹操像は、なんとも魅力的。最後に引用されている曹操への批難文。にもかかわらず、その曹操はとても魅力的に見えた2009/07/18

韓信

2
豊富なエピソードを引いて生き生きと曹操の生涯を描く評伝。はじめはまっとうな官吏として生きようとしていたであろう青年時代や珍しく隠棲時代に触れたり、死の間際の生への執着など、結果論から導き出す乱世の英雄像ではなく、等身大の曹操像を彼自身の詩文を多用しながら描き出しており、劣勢に強いが優勢だと失敗しがちな武人、リアリストな政治家、稀代の詩人という多面性もふくめて非常に魅力的。曹操墓の出土品の分析が進む現在から見ると内容の古さは否めないが、ひとりの人間としての曹操の魅力をここまで深掘りした評伝は他にないのでは。2023/02/11

竜王五代の人

2
「矛を横たえて詩を賦す」という副題の曲解になると思うけど、「矛を横たえて」戦闘の話は置いといて「詩を賦す」文人としても名高い曹操を、その著作を手掛かりに人間像を描いた面白い本。宣伝や言い訳のために語る曹操自らの来歴から川合先生がひきだすものがうまい。曹操、なんだかんだ泣き言も言うし敗北もしているけど、けっこう人生楽しんで生きた快活な人なんじゃないかと思う。立派な、あるいは魁偉な姿形がもてはやされた当時にあって、ショボい見かけだったという指摘がなかなか。2022/08/25

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/211270
  • ご注意事項